第55回(令和3年度)「やってみなはれ佐治敬三賞」受賞者・ファイナリスト

令和4年2月28日に選考委員会を開催し「第55回やってみなはれ佐治敬三賞」を選出いたしました。
今年もたくさんのチャレンジ精神あふれる「やってみなはれ」な作品の応募がありました。
個性あふれるチャレンジ、しっかりと成果を残した作品、安定感のある王道のCM。様々なジャンルからの応募があり、選考委員の皆さんの熱い議論もありましたが、最後は満場一致で選出となりました。

第55回やってみなはれ佐治敬三賞 受賞者

正樂地 咲 氏

正樂地 咲(しょうらくじ さき)氏
株式会社電通 関西支社 クリエーティブ・デザイン局
プランナー コピーライター

プロフィール
ラジオ漬けの思春期を経て広告の仕事に就いた。
日常生活を描くのが好き。
「無理なくつづく」では脚演を担当。
受賞対象作品
  • 番組ポスター(イラスト:平野奈央)
    番組ポスター(イラスト:平野奈央)
  • 番組メニュー
    番組メニュー
  • ロングコートダディ 堂前
    ロングコートダディ 堂前
  • ロングコートダディ 兎
    ロングコートダディ 兎
  • ダスキン1社提供のラジオ番組 「無理なくつづく」(FM大阪にてOA/出演:ロングコートダディ)
受賞理由

1点の作品にすべてのエネルギーが注がれ、企画意図から脚本まで優れたラジオコンテンツに評価が集まった。リスナーとの距離の近いラジオ番組に対して、ラジオ広告との距離感の不足に疑問を持ち、番組とCMの垣根を無くし、新しいラジオ広告のクオリティーを追及された。
55分の不思議な作品は、長尺ラジオ広告へのチャレンジ、リスナーとの距離感へのチャレンジ、そしてラジオ広告の枠を超えてティザー広告や映画のポスターのようなグラフィックまで細かく企画された。選考委員からはビジネスパートナーとしてコラボレーションを望む声も飛び交った。ラジオ広告への執念は「やってみなはれ」の精神を体現しており、満場一致での受賞となりました。

主な受賞歴

・ACC賞ラジオ部門 / 2013年〜2021年まで連続入賞
 (ゴールド・シルバー・ブロンズ・特別賞・ディレクター賞・企画賞)
・TCC新人賞
・OCC賞
・CCN賞
・FCC賞

第55回やってみなはれ佐治敬三賞 ファイナリスト

  • 廣瀬 泰三(電通 関西支社)
  • 審良 聡太郎(博報堂 関西支社)
  • 竹内 堅二(博報堂 関西支社)
  • 福居 亜耶(電通 関西支社)
  • 矢野 貴寿(電通 関西支社)
  • 佐藤 朝子(電通 関西支社)
  • 細田 佳宏(タイガータイガークリエイティブ)
  • クボタのデジタルクリエーティブチーム(電通 関西支社)

第55回やってみなはれ佐治敬三賞 審査講評

選考委員長
世耕 石弘(学校法人 近畿大学 経営戦略本部 本部長)
前回より選考委員長を務めさせて頂いておりますが、今回もコロナ禍により委員が一堂に会することが一度もできない選考となりました。こうした環境の下、各選考委員は多忙極まる中、全て作品に目を通し、強い問題意識を持って選考に挑んでおりました。かくいう私も、強烈なインパクを与えてくれる作品に時に感動し、爆笑し、唸らされながら、そこに採点を加えるという苦しみを味わいながら、この選考に向き合いました。そうした熟慮の上の結論を各委員が持ち寄り、選考会に至ったわけであり、当然、その集計が選考の結果となる手筈ではありました。しかし各委員がそれぞれのイチオシの作品に対して、我が作品のごとく熱く語り、それに感化されて、心揺れ動いた委員も多かったのではないでしょうか。

 結果、“単なる集計”では出るはずではなかった結論に至った次第であります。決して満場一致でもなく、すっきりとした気分で選考会を終えられたわけではありませんでしたが、これは応募者の執念から来るものであり、選考委員は甘んじて受けざるを得なかった感情ではないでしょうか。
暗い時代に少しながら明るい兆しが見えつつありながらも、常に心のどこかで何かに警戒して生きていかなければならない時代。大阪・関西在住のクリエイターが果たさなければならない使命は非常に大きいと、選考会を終えてあらためて強く感じました。今後も本賞の趣旨にもある「広告文化の新しい時代を切り拓くチャレンジ精神あふれる作品」を多く生み出し、日本の広告界を大阪・関西在住のクリエイターが牽引していってくれることを強く願っております。

副委員長
児島 令子(コピーライター)
世の中にはいろんな広告賞があるけれど、
「やってみなはれ」を競うこの賞は、もちろん類を見ない。
作品で選ぶのでなく人で選ぶ。いや精神で選ぶ。広告づくりの精神を審査するのだ。
ちょっと傲慢かも…神でもあるまいし。私は毎年震えながら畏れながら審査する。
何をもってやってみなはれとするかは、制作者個人の問題だ。大きなお世話だ。
だが今年も我ら選考委員団が、よってたかって大きなお世話をした結果が出た。

受賞した正樂地さんは、仕事1本で挑戦してきた。あえての1本か?
自ら作品タイトルに「番組?広告?55分の不思議なラジオコンテンツ」と記している。
既存から抜け出して、仕事の根本から変革したいという思い。
さらにそれをていねいに楽しみつつ具現化。情報発信から運営までも完遂。
この1本を貫く正樂地さんの精神に、やってみなはれを感じずにはいられない。
一方、惜しくも惜しくも次点だった細田さん。
関西電気保安協会の、細田さんの庶民的な品のある面白がらせ精神に、
来年も出会えることを楽しみにしている自分がいる。

私をはじめ、神でもないただの人間たち選考委員は、
どれがやってみなはれで、どれが違うなどと選別する役目じゃない。
ただ、出された見知らぬ料理を背筋を伸ばして食し、
ピンときた味に心喜ばせ美味しさを語り合い、才能を発見していく。
つまり出されて初めて、それが新たなるやってみなはれだったことに気づくのだ。
今年は特にそうだった気がする。こんなやってみなはれがあるんだなと。
この賞には過去を基準にしたモノサシはない。
やってみなはれは、常に未来に向かう精神だから。

打田 一成(博報堂関西支社1BD局 クリエイティブディレクター)
最近テレビを見る時間がすごく減ったなあと思っていたら、
デジタルの広告費がマスメディアを抜いたというニュースが。やっぱり。
広告を取り巻く環境の変化が加速する中、広告クリエイターの存在価値は、「マジック」を起こせるかどうかにかかっていると思っています。
「計算」や「ロジック」ではたどりつけない、人の心を動かすマジック。
今年私がいちばんマジックを感じたのは、細田さんの関西電気保安協会の絵画シリーズでした。
歌ネタをさらに深掘りして、またすごいフォーマットを見つけましたね。
毎年パワーを落とさずリフレッシュすることの難しさを感じさせないところが見事です。
他に目立ったのは、あの手この手で世の中をざわつかせる手口の多彩さがマジカルだった審良さん。
アース製薬「この虫ケアが。」ダイドー「裏面自販機」などがとくに印象的でした。
福居さんのAC「お金の話はゆ〜っくり」「3時4時の歌」も、視点のやわらかさと着地の技にマジックを感じました。
もはやファイナリスト常連になっている、佐藤さん、竹内さん、矢野さんも
相変わらずのクオリティ。今後の爆発に期待したいと思います。
そして、受賞された正樂地さん。
広告という体験を変えるマジックへのチャレンジと、その熱量が素晴らしかった。
いま広告クリエイターに必要な心がまえを、思い知らせてくれました。
例年以上に難しい審査の中、議論を経て正樂地さんに票が集まっていったのは、
チャレンジする人を応援する佐治敬三賞らしかったと思います。
受賞おめでとうございます。
岡 ゆかり((株)サン・アド クリエイティブ本部)
今年もたくさんの個性溢れる力作がエントリーされました。
コロナ禍も3年目を迎え、深刻な状況の中でも日常を取り戻し、前を向こうとする世の中を反映した前向きな広告が多かったように感じています。
企業の悩みや課題に対し、真摯に向き合い、アイデアを絞りだし、生活者の気持ちを掴もうと切磋琢磨するクリエイターの皆さまの熱い想いをヒシヒシと感じながら、楽しく審査をさせていただきました。
グランプリを受賞された正樂地さん!おめでとうございます。
「無理なくつづく」は正樂地ワールド全開の想像を超えた大作でした。
約1時間ほどあるラジオ番組を、一消費者として時には笑い、時にはじわっと心を揺さぶられつつ、すっかり引き込まれてしまいました。
ダスキンさんのブランドパーパス「無理なくつづく」というコンセプトの下、日常をテーマにコントや詩やドラマをよしもとのコント師ロングコートダディさんに1人10役で演じていただくという作品。
番組とCMの垣根をなくし、新しいかたちのラジオ広告を産み出す、という大きなチャレンジを果たされました。
ラジオという非常にパーソナルなメディアの特性を研究し尽くし、脚本、演出、運営、twitteの中の人までたったお1人で担当されるという、ラジオ愛に溢れまくった正樂地さんの熱すぎるチャレンジ。
この1作品に全てを込めて応募されたという潔さも最終的な評価の決めてとなりました。
ダスキンさんとの間にきっと強い絆が生まれたのだろうと思いますが、これぞ広告の醍醐味なのではないでしょうか。

個人的には、電通関西の福居亜耶さんのLGBTQに強い熱意と実行力で取り組まれた作品にも強く関係を受けました。
広告の力でまだまだ世の中を変えていける。福居さんの決意と勇気を感じる作品たちでした。
矢野さんの牛乳石鹸「Sento is PARADAISE」も飽きさせないアイデアが詰め込まれ、クオリティも高く心地よい読後感で、大変好感の持てる作品でした。
他にも毎年本当に大阪らしいパンチのある作品を産み出し続ける細田さん、大阪らしい独特のゆるさで世の中に癒しを届け続ける佐藤朝子さん。
コテコテだけでない、現代的でちょっとカッコいい大阪の一面を魅せ続けてくださる博報堂の竹内さん、審良さん。今年も本当に惜しかったんです!!!
来年のみなさまの『やってみなはれ』を心より楽しみに、応援しております。

喜多 真二(株式会社大広WEDO 大阪クリエイティブ力Division CD)
今年の応募作品の力は、とても拮抗していた。逆に言えば、突出したものがなかったとも言えるのかもしれない。その中で、正樂地さんの55分のラジオ作品「無理なくつづく」は、コンテンツと考えれば、よくできているけれど、ありがちなものだと最初は考えていた。しかし、選考を続けていく中で、広告というもののパワーが昔ほど発揮できない今の時代に、広告コミュニケーションはどうあるべきなのかを考え、ラジオというものを深く洞察し、新しいパワーをどのように付加できるのか?という課題に対しての、ひとつの答えがこの作品だったと気づかされた。この作品は、ラジオをこよなく愛し、ラジオのことを誰よりもよく理解している正樂地さんだからこそ成し遂げられた「やってみなはれ!」だった。正樂地さんのラジオ愛に脱帽です。正樂地さん、おめでとう。竹内さん審良さんの「転生したら鬼退治を命じられました」はお気に入りの作品。テンポよく面白くまとめられていて、誰かに教えてあげたくなりました。細田さんの関西電気保安協会の作品は、チャレンジ精神溢れる力作。クボタのデジタルクリエイティブチームの作品をみると、ついついお米を食べたくなりました。福居さんの社会を見つめて実行へつなげていく力は、とても大切だと思う。佐藤さんのなるほどと思わず頷く説得力。廣瀬さんの答えはわかっているのに面白いマッチポンプ劇場。矢野さんの牛乳石鹼は長尺動画を飽きずにみせる構成力。みんな個性的でいい仕事でした。選考委員を楽しませながらも、大いに悩ませてくれました。やってみなはれ佐治敬三賞は広告賞の中でも珍しい、個人の取り組む姿勢を評価する広告賞。それぞれの仕事の中にどれくらい自分らしさを織り込めているのか?どれくらい「やってみた!」のか?なにより選考委員が、もっと「やってみなはれ!」と後押ししたい気持ちになるか?が、勝負の分かれ目。クリエイターのみなさん!これからも仕事の中に、あなたの「やってみたい!」ことを確信犯的に滑り込ませて、あたらしい、そしてあなたらしい広告コミュニケーションで選考委員に「やってみなはれ!」と言わせてください。
佐藤 尚之(コミュニケーション・ディレクター)
ボクは細田佳宏さんを推した。
「関西電気保安協会」という、関西では伝説のクリエイティブに対して逃げずに正面からしっかり背負ったうえで、大きく乗り越えて投げ切っている。
これは関西の代表的広告賞のひとつである本賞こそが評価すべきものだと考えるし、細田さん個人としてもいろんな引き出しをもったクリエイターとしてボクは高く評価した。
残念ながら決選投票で僅差で敗れてしまったが、これにめげず、次回もぜひ参加してほしいと願っている。
他にも何度もトライしてくれている参加者の方々は、本当に毎年なんとか!と思うのだけど、毎年「ちょっとだけ勢いがある誰か」に獲られてしまって、きっととても悔しがっていると想像する。ただですね。人生的に必ず「流れ」が来るときが来るので(いやホント)、是非めげずにチャレンジしてほしいなと願っている。
ボクは今回で審査員を辞任して後進にお任せしようと思っているのだけど、これからもずっと楽しみに関西のクリエイターたちの活躍に注目していきたいと思っている。
長い間ありがとうございました。
中島 信也(株式会社東北新社 取締役社長 CMディレクター)
ターゲットのインサイトを掘り起こしアプローチを最適化することによってコミュニケーションを醸成し広告主のプロブレムをソリューションするのが広告制作者のミッションである。なんのこっちゃ!そうかもしらん。そうかもしらんけどオートメーションでできると思ったら大間違いや。全くおんなじ工程を経ても「広告制作者が誰か」によって伝わり方が全然違う。この魔法、超能力をスペシャルに有する「誰か」を発見するのが「佐治敬三賞」の使命やと思う。佐治敬三さんは「やってみなはれ」だけではなく「人間らしくやりたいナ」という精神を提唱している。「人間らしく」ということこそが「人間の心」を動かす、ということなんやと思う。今年の佐治敬三賞、正樂地咲さん。「やってみなはれ」なチャレンジではあるが、正樂地さん個人のメディアに対する深い「愛情」と「人間らしさ」に満ち溢れた表現がその背後に息づいている。その結果ターゲットのインサイトを掘り起こしアプローチを最適化することによってコミュニケーションを醸成し広告主のプロブレムをソリューションしたんや。だからなんのこっちゃ!
古川 雅之(株式会社電通関西支社 クリエーティブ・デザイン局GCD)
 正直に言うと、事前審査で自身の一押しが決められないまま、しどろもどろで最終審査に挑んだ。
どれもが高いレベルでよくできていたからとも言える。が、突出したもの頭抜けたものがどれだろう
かと考えるとひとりに絞れず、つい高得点を乱発してしまったのだ。審査員としてそれじゃアカンの
ちゃうかと自責していたら、最終審査のリストに(事前審査の集計で)ほぼほぼ満票に近い6名が並
んだのを見て、ほれほれほれみんなも悩まれたんですよね、んも~と身をよじって安堵した。
ーー何をもって、やってみなはれとするのか。
審査員の皆さんの意見に、判断基準までぐらんぐらんと揺さぶられる。普段は人の意見なんぞで
自身の意見を変えることなどまったくしないであろう面々が、みな揺らいでいるように見える。
大波小波ぐらんぐらん。そのうねりを見事に捉えたのが、ラジオが好きすぎてラジオ番組を作って
みなはった正樂地氏。おめでとう。
 6秒さえもくれてやるのが惜しいこの可処分時間争奪戦の時代に、審査とは言え55分、無理なく
聞いてしまった(失礼)。との声多数。審査はクリエーティビティについて議論されていくが、最後
の決め手は、やはり人である。その熱量と言うか執念と言うかラジオに対して自分が持てる愛情とか
造詣などを余すことなく「自分ごと注ぎ込んだ」末の迫力あろう。本人を少し知っているので言うが、
この番組はどこを切っても正樂印。自分のやりたかったことだけで作っているんだとわかる。
ニコニコと、怖いほどの執着。他にもたくさん仕事してきたであろうに、一見地味な(失礼)ラジオ
番組企画1本で勝負してきたのも今回ばかりは功を奏した。
 一等賞になるには、波を掴む…機運というか、そのための迫力みたいなものがいるように思う。
毎年そこそこの粒を揃えて尚、なかなか脱せないファイナリストたちに何かヒントにはならぬか。 
 惜しくも次点だった細田氏。保安協会は突出していたと感じる。とくにグラフィックの名画シリーズ
はどんどん作れる大発明だ。チームククボタは応募作どれもがハイクオリティな動画作品。企画も完成
度も熱量も文句なしと思ったが、可処分時間争奪戦の議論(自分は最後まで見る・見ない)で最後に
賛否が割れた。長尺動画は、審査でも厳しい時代が訪れてきているか。
 あと善戦したのは福居氏。社会問題への取り組み、問題提起はいま不可欠でありこの行動力と実現力
こそやってみなはれだと審査員の賞賛も。アウトプットのクリエーティブの部分で少し注文がついた。
きっと、もっと行けるよと期待の声。そして審良氏。おそらくいま関西のクリエーティブ界でいちばん
忙しそうな圧巻の応募数であったが、その熱量に審査員たちは驚き、引いた。近いうちに「なら、これ
でどうや!」とやってくれそうなパワーを纏っている。
村山 貴浩(株式会社ADKクリエイティブ・ワン エリアビジネス局 関西クリエイティブグループ長)
審査三年目でしたが、今年が一番悩みました。
作品を通して、もっとも「やってみなはれな人」を選ぶのがこの賞ですが、
チャレンジの質、アイデアの新しさ、広告として本質さ、そして人の熱量という観点で、今年はどれも飛びぬけた人というより、拮抗した人たちの中から選ぶという様相になり、その判断軸が難しかったです。
審査の議論の中でもっとも印象に残ったのは「可処分時間と戦う」という言葉。
一日の限られた時間の奪い合いで、ますます広告はみたくないものになっている中、そこに広告としてどうチャレンジしていくのかというのは、判断軸として腑に落ちるものがありました。受賞された正樂地さんはラジオCMのあり方を考えつくし「無理なくつづく」のラジオコンテンツ一本の中に、まさにそんなチャレンジが凝縮されていました。
最後まで競っていたのは細田さん。関西電気保安協会の広告で、表現を進化させつづける才能には嫉妬するばかりですが、突然関西人になってしまった男の突破力から、さらに新たに名画シリーズのフレームを見いだし、いったいどこに目がついているのかと、ほんとに驚きました。決して派手ではないけれど、とても気になったのは福居さん。どの作品も、弱い人の側に立つ眼差しが心に残りました。ラジオCMがアルバイトの現場になる発想をはじめ、広告で世の中を良くしたいという芯の強い情熱を感じました。それから、新しい表現をやってやろう!という企みが溢れていた集団「クボタチーム」。米に何しとんねん!とツッコませないほどの、米への愛の溢れ方にスカッとしました。
また、人間をちゃんと見つめて、時に骨太に、時に愚かしく、いろんな手口で表現する矢野さん。やさしく人を見つめて、ユーモアやハッとすることばで表現する佐藤さん。メッセージからの逆算で、いかようにも惹きつける入り口を作れる廣瀬さん。3人の高いレベルの技に唸りました。福知山市の「#転鬼」を作ったお二人。このテンポ感にまんまとハマって、最後まで見たくなってしまった。奇想天外な発想と表現、お見事です。
悩みに悩んだ審査でしたが、最後は二人の候補者にくっきりと分かれて、どちらの方にも今年のあるべき「やってみなはれ」の姿が見えた気がしました。
受賞された正樂地さん、ファイナリストのみなさん、おめでとうございました!
山崎 隆明(株式会社ワトソン・クリック クリエイティブディレクター)
今回の佐治敬三賞の審査で特に気をつけたことは、
時代性や新しさをうわべだけで捉えて作った広告や
目立てばいい、面白ければいいと思っている広告と
本質的なコアがある広告を選別することです。
今年は突出した作品がなくてかなり悩みましたが、
私は正樂地さんの作品をグランプリに推しました。
一見新しさを感じないラジオの長尺コンテンツですが、
TikTokの広告など、
広告然としたものが瞬時にスクロールされてしまう時代に、
ラジオリスナーにとってオーガニック感がある表現に
クライアントメッセージを入れるのは、いまっぽいなと思ったし、
ダスキンの残り方も押しつけがましくなく、感じよく受け入れられるので好感が持てました。
なによりストレスなく楽しんで聴くことができたので、ちゃんとワークする広告だと思います。
やっぱり制作者が自分が好きな世界で楽しんで作っているコンテンツは、
表現としての強度があることを再確認しました。
ノミネートのなかにも好きな作品がいくつもありました。
なかでも細田さんのあの名作CMをうまく利用しつつ、
表現のベクトルを変えた関西電気保安協会は素晴らしいな、と。
あとひとつ、いい出品作があれば、グランプリだったかもしれません。
次回に期待します。

歴代の受賞作品はこちら

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