News「カンヌライオンズ2014」&「カンヌライオンズヘルス」報告会 ≪講演レポート≫

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「カンヌライオンズ2014」&「カンヌライオンズヘルス」報告会≪講演レポート≫

平成26年9月29日(月)、「公益社団法人大阪広告協会CM合同研究会」主催、による「2014カンヌライオンズ」の報告会が電通関西支社で開催され、105人の参加者があった。今年はライオンズヘルスが新設され、その初代グランプリをはじめ、日本の受賞作は全部で57本と好調でした。
ライオンズヘルスとカンヌ・フィルム部門で審査員を勤められたお二方をお迎えして、受賞作の紹介や現地の様子などを解説いただきました。


≪講演レポート≫
第1講 14:00~15:00
『第1回カンヌライオンズヘルス(Lions Health)』
≪解説≫カンヌライオンズヘルス Health&Wellness部門審査員
電通シニア・クリエーティブ・ディレクター 加茂 麻由子 氏

ライオンズヘルスの概要
ライオンズヘルス(LH)部門ができた理由は2つあります。ひとつは、規制が多い業界のため独自の評価軸が必要なこと、厳しい規制下でも優れたクリエイティビティが可能だという気づきを促すことです。もうひとつは、新部門によりフェスティバルを発展させ、また成長領域であるヘルスケア業界でクライアントを含め業界を活性化したいという狙いもあることです。
クライアントからの専門性を要するオファーに伴い、現在ヘルスケア領域専門のエージェンシーが増加している。マッキャン・ヘルスやサーチ&サーチ・ウェルネスなど、大手が専門のエージェンシーを独立させたり、新興のエージェンシーも進出してきています。
LHにはプロフェッショナル向けコミュニケーション中心のPharmaと、一般消費者向けのHealth & Wellnessの2部門があります。私が審査を務めたHealth & Wellnessには薬局で買えるOTC(市販薬)から健康食品、啓発活動、保険などを含む9つのカテゴリーがあります。①OTC Oral ②OTC Applications ③OTC products / Devices ④Nutraceuticals Veterinary ⑤Education & Awareness  ⑥Clinics & Hospitals ⑦Insurance ⑧Other
最もエントリーが多かったのがEducation & Awareness(健康啓発・普及)でLH全1423作品のうち、49カ国から906作品のエントリーがありました。
審査にあたって提示されたキーワードが「Life-changing idea」。生死を含めて何かを変えたり、生み出すことのできるライフチェンジング・アイデアという観点を大切にして審査が行われました。
LHは次のような3つの特徴がありました。
① 非営利団体(チャリティー系)の作品が多かった
② さまざまなテーマ、さまざまな媒体の作品があった
③ 初年度のため作品の応募対象が2年間だった

 

 

 

 

<第1回グランプリ作品>
・グランプリ・金賞:「Mother Book」葵鐘会・ベルネット/電通中部支社
・Pharma部門:グランプリ該当なし
※ Granprix for Good(非営利団体対象):「CANCERTWEETS」 Colombian League Against Cancer /Leo Burnett Colombia

① 非営利団体(チャリティー系)の作品
Health & Wellness部門5つの金賞のうち2つはチャリティ系で、その初代グランプリに輝いたのが「Mother Book」でした。40週の妊娠期間に合わせた40ページで構成されており、1週毎にお腹が膨らんでいく立体的な仕掛けとなっていて、母になる歓びを深めると同時に、妊娠時の気持ちを書き留めて将来子供にプレゼントできる点も評価されました。さらにカンヌデザイン部門でも金賞2つと銀賞1つを受賞しています。
全審査を通じてトップスコアだった「Mother Book」の対抗馬が「CANCERTWEETS」でした。Twitterを使ってガンの早期発見への意識を啓発する事例です。これが最終的にGranprix for Goodを受賞しました。
一方は手作り感あふれる人生の始まりの小さな命の物語、一方は現代のメディアを使ってガン早期発見の大切さを知る体験。対照的な作品でしたが、第1回グランプリとしては「Celebretion of Life:命への賞賛」という想いが込められたと思います。

② さまざまなテーマ、さまざまな媒体の作品
PR・プロモーション・ウェブ・モバイル・統合キャンペーンに関しては、Creativity:30%、Strategy and Relevance to Medium:20%、Execution:20%、Results:30%という基準が設けられて審査が行われました。受賞作は次の通りです。
銀賞:「If only for a second」Mini Foundation
ほんの一瞬でも最高の時間があれば、辛い病にも立ち向かっていけるという前向きなアイデアが評価された。カンヌ5部門でも金賞・銀賞を獲得。
銀賞:「:{TO:}Cleftosmile 」Operation smile India
口唇裂・口蓋裂の障害がある子供に無料で手術をして世界中に笑顔を増やすという活動。趣旨を象徴する:{TO:}を打ち込むだけでキャンペーンサイトへ行ける。難しい課題をシンプルに表現した点が評価。デザイン部門 金賞 銅賞:「Bentley burial」ABTO
ブラジルの名士が庭に高級車ベントレーを埋めるとFB上で発言して話題を喚起。「ベントレーを埋めるなんてバカげてると非難するが、実際人々はもっと価値あるものを埋葬している」と臓器提供を呼びかける。臓器提供の作品は非常に多かったが、このアプローチはひときわ斬新。プロモ部門金賞・アウトドア部門銀賞・ダイレクト部門銅賞・メディア部門銀賞・サイバー部門銀賞
銀賞:「Water eye performance」Eye MO
有名な書家による路上パフォーマンスをマスコミに告知。取材に来ると目薬「EYEMO」のPRだったというからくりや効率的な予算の使い方が秀逸。OOHに厳しいシンガポールで、水を使った書によりストリートパフォーマンスを実現させた。
銅賞:「8Lives」
臓器提供を促すリーフレット。ページ毎の人体図には各臓器部分が切り抜かれ、重ねると1人の身体に全臓器が収まるしくみ。1人のドナー提供が8人の命に変わっていくということをメッセージ。
銅賞:「Head 1 & 2」
頭痛の種になるようなシーンを表現。No rooms for headache(頭痛なんて気にしてられない)というコピーに合わせ、家に見立てた絵で表した。

③ 初年度のため作品の応募対象が2年間だった
このため昨年既に受賞した作品も多く選ばれました。
金賞:「Batting practice center」ムラタ漢方
電通関西制作の「梅花五福丸」。カンヌでもスパイクスでも審査員が何度も見たがる人気の作品。’13フィルム銀賞。
金賞:「My blood is red and black」HEMOBA E.C.Victoria
ブラジル・サッカーのクラブチームによるドナー登録キャンペーン。献血件数に合わせて白黒に変えたユニフォームのボーダーが赤色に戻っていくという仕掛け。数多ある献血キャンペーンの中でもずば抜けて面白いキャンペーンだった。’13カンヌ5部門で受賞
銀賞:「Man」ANADOR
頭痛薬の広告。映像とナレーションが非常に明快でテンポが良く、審査員に好評だった作品。‘13フィルム銀賞 銀賞:「The germ stamp」P&G
手洗いの習慣を啓発するキャンペーン。ヘルスケアのメジャーエージェンシーが発展途上国で啓発キャンペーンを行う例は多かったが、これは特にわかりやすく、スタンプが消えるまで手洗いする効果の面でも評価された。
‘13カンヌ3部門で賞。子供達が手を洗いたくなるおもちゃ入りの石けんを考案した「HOAP SOAP」も良い作品だった(銅賞)。

セミナーの開催・今後の課題
各会場ではヘルスケアエージェンシーやクライアントが参加してセミナーが行われました。電通は「AD-MED」という広告医学のセミナーを開催しました。高齢化や医療費高騰を背景に生活習慣病の予防が大きな課題となる中、我々もこういう分野でもっとクリエイティブの力を活かしていけると思います。広告会社が得意とするDESIGN、ACTIVATE、CONNECT&SUSTAINを通して課題解決に貢献できます。
来年以降に向けて課題もいくつかあります。まずPRやプロモなどはCMやプリントとは違う評価基準なので、同じカテゴリーの中でどう調整して審査できるかという点があります。またヘルスケア部門は非営利団体の作品が多いので、営利団体しかグランプリを取れないカンヌでは、今後もグランプリ該当なしという事態が起こっていくでしょう。
ヘルスケアはどんな人にも関係あるジャンルです。OTHER部門は医療系などの縛りがないので、例えば履いて癒される靴や住むだけで健康になる家といった幅広い分野からのエントリーも見込まれます。規制が多いからといって審査基準が甘いわけではなく、皆優れたコアアイデアや新しい視点を持つものが選ばれています。来年はもっといろんな作品がエントリーされて混沌としていくと思います。

 

 

 

 

第2講 15:10~16:40
『カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(カンヌライオンズ2014)』 
≪解説≫2014年カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル Film Lions審査員
電通エグゼクティブ・クリエーティブディレクター 古川 裕也 氏

フィルム部門は大きくA、TV-CM、B、Internet Film、C、それ以外の3つのカテゴリーに分けられます。3つのカテゴリー全部同じクライテリアでいいのかについて、度々議論が起こって選考が複雑化。最終的にはフィルムであることの意義という点をいちばん重視して審査を行いました。

社会問題に関する事例
去年はフォーグッド旋風だったが、今年は去年ほどスキャムっぽいものは少なかった。その中で選ばれたSocial issuesの好例。
①銀賞:「I will survive」
TV-CMで、いじめというシリアスな問題をユーモラスに伝えるフィルム的な良さが評価された。
②銅賞:「Taxi Stoltenberg」ノルウェー選挙運動
インターネットフィルムで、ノルウェーの首相がタクシー運転手になって有権者の声を聞くというもの。それぞれAカテゴリーらしいTVCMとBカテゴリーらしいインターネットフィルム。

プロダクトCM
今年はトップスリー+1ぐらいが抜きん出ており、全体的には驚くような作品は少なかった。
① 金賞:「Marmite」Unilever
家庭で眠っているMarmiteを救出するという、商品特性から面白いストーリーを展開した例。
② 銀賞:「Teddy tragedy」Volkswagen
プロダクトの特徴をストーリーテリングで伝えるいわばVWの伝統芸。
③ 金賞:「Mom song」OLD SPICE
OLD SPICEは大ヒットキャンペーンの直後で難しかったと思うが、お母さんのインサイトに注目した点が評価され、グランプリ候補にもなった。

ハイスコア作品
グランプリまでは行かないが、金賞の中でも高得点だった作品
① 金賞:「KARATE」サザンコンフォート
ユニークな映像とLes Paul & Mary Fordのラブソングがマッチして、サザンコンフォートのカルチャーが巧く表現されている。
② 金賞:「Too depressing 」DU TELECOM
映画チケット半額キャンペーンのCM。良く出来ているが、悲惨さを徹底的に表現してタグラインで落とすのはカンヌではオーソドックスな論理構造。
③ 金賞「First kiss」WREN
B・Cカテゴリーのグランプリ決選投票の最後の3本に残った作品。初めて会った人同士がキスをするというアパレルメーカーのPVで、1週間で600〜700万回ものアクセスがあるほど話題になった。タグラインはおろかブランド名もいっさい出てこない、バイラルフィルムらしい共感とシェアのされ方が高く評価された。

ブランド広告
昔は海外で大きな広告賞を狙う場合、極力言葉を使わないのが鉄則だったが、4,5年ほど前からブランド広告はよくしゃべる傾向にあります。ブランディングがブランド哲学を語るものと認識して企業がCMを作っているからです。哲学をていねいに語ろうとするためタグラインではなく、ナレーションでたっぷり語るCMが高く評価されるようになってきています。
① 金賞:「Possibilities」Nike-Just Do It
② 金賞:「Perfect day」Sonny PS4
③ 銅賞:「Life is not a marathon」リクルート
僕がCDを勤めた作品。機会があれば哲学を語るブランド広告をやろうと思っていた。人生はひとつではなく、いろんな道があっていいのだというメッセージをリクルートの企業フィロソフィーとして伝えた。

日本のCMでは賞を取ったのが2本、ショートリスト以上3本で、だいたい例年通りの成果でした。

グランプリ作品
これら3作品がダントツの評価を得ました。
① グランプリ:「The epic split feat」Volvo Truck/ForsBondenfors, Sweden
前半にフィロソフィーが語られ、後半で股割きという高度に計算されたデモンストレーション。そこにエンヤが流れることでリクツ抜きにエモーショナルなCMになりました。フィルム部門に重要な音楽・言葉・映像の3要素が見事にマッチした作品。
② Aカテ金賞:「Sorry I spend it on myself 」Heavy Nicholson/adam & eve DDB 
ギフトから自分のために使うという優れたインサイトにより、有名百貨店のクリスマスギフト・プロモーション。そのインサイトをコメディ仕立てに仕上げたCMもさることながら、それを巧くえぐったプロモーションキャンペーンの商品設計がすぐれている。
③ BCカテ金賞:「SOUND OF HONDA」HONDA internavi/電通
走行データというデジタルな情報をクリエイティブの力でエモーショナルな作品に仕上げている。制作者の話によると、最初に走行グラフの紙データを見ただけで興奮したという。全く新しいリソースから生まれたCM。


Aカテゴリーはオールドスパイス、サザンコンフォート、DU TELECOM、プレステ、ハーベイニコルズがノミネートされていて、すんなりハーベイニコルズに決まりました。BCカテゴリーではFirst kiss、ボルボ、ホンダの3つがノミネート。ホンダは斬新なアイデアから構築したクリエイティブが高く評価されたが、これはデータというクリエイティブにとって全く新しいリソースからエモーショナル表現に仕立てた方程式がすごいのであって、必ずしもフィルムとしてすごいのではない。むしろチタニウムで評価すべきだ。フィルムならではのパワーという意味ではボルボこそがグランプリには相応しいという意見でした。ホンダはチタニウムでグランプリを取ったので結果的にこの評価は適切だったと思います。

Function of Film
近年広告のカテゴリーも大幅に増え、我々の仕事もクライアントの課題にどうソリューションアイデアを提供するかという風に変化してきています。数々の手段がある中で、フィルムのファンクションとは一体何だろう。グランプリのホンダもボルボもインターネット中心に発信、ハーベイニコルズも多くの人はネットでプロモーションを理解しています。つまりCMをTVで見るとは限らない時代になっていて、メディアの使い方、どんな流し方がベストなのかを考える必要があります。
またフィルム以外のカテゴリーはほとんどがケースビデオを見て審査するので脳を通しての評価ですが、フィルムは唯一脳を通過しないカテゴリーです。表現そのものが純粋に評価される、Function>Emotion。効果、関心、便利、方法、利益に貢献などは勘案しない、100%表現だけの関係的直接的な分野だと言えます。
ここ3年ぐらいムービーの時代と言われていますが、ケースビデオ自体もクオリティの高いものでなければノミネートされにくい。フィルムの本質的価値は持っていく力。その意味でヒトを動かすために一番強い道具がフィルムだと思います。どんな種類のアイデアであれ、すべては人の心を動かすことがいちばん重要。だからこそムービーの時代だと再び言われているのです。

セミナーについて
近年のカンヌではエージェンシーだけでなくクライアントも参加して、100以上のセミナーが行われています。電通イージス・ネットワークからもDentsu Asis networkとMcGarry Bowenがセミナーを開催。私はライオンズヘルス(LH)と電通セミナー2つのディレクションを担当しました。
LHの本当の狙いを補足しておくと、いまヘルスケア業界では全技術を治療から予防医学へシフトさせようとする大きな変換期を迎えています。そこに大きなお金が動くので、カンヌをビジネスメイクの場にしたいという狙いがあると思われます。医療費高騰による世界的な財政破綻を救済する意味でも、ヘルス業界のグローバルカンパニーを中心に1つの産業を丸ごと呼び寄せたいのがLHの狙いです。
第14回を迎える電通セミナーでは東京五輪開催の流れもあり、「THE AUGMENTED HUMAN〜スポーツにおけるクリエイティブとテクノロジーの融合〜」を開催しました。クリエイティブとテクノロジーの融合により、スポーツにどんなイノベーションを起こせるかを紹介。東京大学大学院情報学環の暦本先生、フェンシングの太田雄貴選手、電通CDC/デジタル・クリエーティブ・センターの佐々木康晴(電通)が登壇しました。人間の能力を拡張させる。つまり極めてヒューマンなゴールのためにテクノロジーがあるというメッセージを発信しました。

ビジネス・プレゼンの場としてのカンヌ
Advertising からCreativityへカンヌの本質も変遷してきています。先日カンヌのテリー・サベージ会長と対談しましたが、クリエイティビティによって創られるすべての仕事は、カンヌがエンカレッジして発展させていくと言っていました。つまりこれまでは今ある仕事のショーケース的な場だったが、現在のカンヌはアワードとセミナーで証明した能力をアピールすることで、次の仕事を創る場となっています。エージェンシーのプレゼンスを上げるために賞やセミナーがあるという風に変化してきています。クリエイティブの場でなく、ビジネスメイキングの場に変貌しているのです。
カンヌをビジネス・プレゼンテーションの場としてより能動的に利用することが効率的かつ重要になってきています。

 

 

 

 

2014年12月19日

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