News地域委員会夏季セミナー 「大阪のまちづくりを考える」≪講演レポート≫

2014地域委員会夏季セミナー「大阪のまちづくりを考える」≪講演レポート≫
2014年7月15日(火) 13:30~16:40

昨年・一昨年とご高評いただいた「グランフロント大阪」「あべのハルカス」に続き、大阪の都市開発の現状や将来像を考える講演会を夏季セミナーとして開催致しました。

国家戦略特区認定などにともない、大阪の街も大きく変貌してまいります。大阪市全体のグランドデザインと難波の街づくりについて、大阪市都市計画局理事 高橋徹様と南海電気鉄道株式会社グループ事業室部長兼経営企画部長 和田真治様にご講演頂きました。

講演レポート
≪第1部≫

・大阪市都市計画局   理事 高橋 徹 様
「これからの大阪のまちづくり -グローバルに、そしてイノベーティブに-」
今日は大阪市のまちづくりの取り組みについてご紹介していきたいと思います。
私は1985年に大阪市役所にはいり、30年間ずっと都市計画を担当してきましたが、今年4月からは経済戦略局理事も兼職になり、企業誘致やIRも担当しております。
大きく3点に整理して話をします。
① 大阪市の現状と再生のシナリオ
② 具体的な取り組み
③ 国家戦略特区と大阪再生に向けて
「大阪市の現状について」
たとえば、京阪神都市圏をニューヨーク都市圏、ロンドン都市圏と比較しますと面積・人口規模はほぼ遜色ありませんが、核都市やその都心を比較しますと人口対雇用人口の比率で見劣りするデータがございます。京阪神という世界的にも大きなマーケットを抱えながら中核となる大阪市がもっと活性化することによって都市圏全体によい影響を与えられると考えています。
また大都市の人口問題は、東京圏、名古屋圏、関西圏ともに少子よりも高齢化が深刻です。30年後関西では85歳以上の高齢者が約100万人増えることになっています。人にやさしい街づくりは喫緊の課題です。 昼間人口(働いている人口)と夜間人口(住んでいる人口)で見ますと、100万人が近隣都市から大阪市内に働きにきているということになります。この昼夜間人口率も東京と同様に大阪は高いほうです。また、事業所数が減ったことが主な原因ですが昼間人口が減ってきていることも課題のひとつです。夜間人口が増えてきているのは都心のタワーマンションの影響です。
大阪市税収のうち個人からいただく市民税は全体の20%、法人からいただく市民税が20%です。たとえば人口規模が同様の横浜市ですと個人40%法人10%となります。市民税が大阪市の主要な収入になっていない、ということの結果です。担税力のある方が、阪神間の住宅地に住み、大阪に働きにこられているとうことです。したがって法人市民税を納めていただいている企業の活動サポートが重要になってまいります。
大学ですが、街づくりには欠かせない存在ですが、東京都内に95、京都26、名古屋17あるのに対し大阪市内には11しかありません。日本経済が右肩上がりの時期に都市部への人口流入をとめるために「工場等制限法」が昭和39年にできました。この制限される施設のひとつに大学が含まれていたのです。東京ではこの法律の施行後も都内の大学は存在し続けたのですが、大阪では転出するところが多かったのです。この法律は平成14年に廃止になり、以後大学誘致を政策として掲げております。
インフラ課題認識ですが、国際空港のアクセス時間でいえば関空まで68分かかっていて主要都市の国際空港までの所要時間と比較しても時間がかかりすぎです。世界標準の40分までもっていこうとしておりまして「地下鉄なにわ筋線」事業化を検討してまいります。今年年頭に府市からも発表があったように西日本旅客鉄道さん、南海電気鉄道さんと共同で調査を開始いたしました。
また、高速道路や鉄道の密度を東京はじめ他都市と比較しますと東京よりも高いデータがでております。しかし、首都圏では2020年の東京オリンピック開催に向けてさらに整備を進められており、大阪もミッシングリンクの解消に努め、大都市にふさわしいインフラを保持するため具体的な活動にはいっております。
「都市再生 Hop Stage 2002年~2013年」
2002年小泉内閣で都市再生特別措置法が成立し、特区構想や工場等制限法が廃止になったことがきっかけで「うめきた構想」を実行にうつしました。都市再生特区緊急整備地域には大阪駅周辺・中之島・御堂筋周辺の他に難波湊町・あべの・OBP周辺・コスモスクエアの5地域ありますが、すでにご存知のグランフロント大阪、大阪駅・時空の広場、阪急百貨店本店、ブリーゼタワー、富国生命ビル、本町ガーデンシテイ、フェステイバルタワー、ODONAやそごう再建などは特区を使った施設です。これらの施設開発に共通してお願いしているのは、高容積の緩和を行うにあたって、人にやさしい環境に配慮した空間と、文化と芸術・学術、ビジネス機能の高質化をお願いしております。
海外の事例ですが、ニューヨークでは前任市長時代からまちづくりを重要視してきました。コンセプトは「より環境にやさしく、より素晴らしいニューヨークに」とし、「市民100万人増加」「10分以内で公園に」「交通手段の信頼性と質」の3本柱に取り組んでおられます。
鉄道軌道跡を行政で買い取って2層の歩行・休息スペースができています。車道を減らし、自転車専用道路や歩道、カフェをつくるなど「車にかわる公共交通」「車から人」という考え方をどんどん具現化しており、このニューヨークの取り組みは世界の潮流となってきております。前ニューヨーク市長のように、「都市格」を持ち市民が誇れるまちにすることがグローバルに評価される都市になることである、という強い信念をもたねばできないことです。
「都市再生 Step Stage 2014年~2025年」
東京オリンピックとどう付き合っていくのか、が課題です。オリンピックを文化イベントととらえて関西がうまく連携していきたいのですが、2020年は大阪万博から50周年になります。是非皆様のアイデアをいただきながら進めたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
Step Stageにおける取り組みの状況をご紹介します。
うめきたナレッジキャピタルでは大阪イノベーションハブ(OHB)を創設しグローバルイノベーション事業創出支援事業の場を形成しています。大阪市経済戦略局からも約10名のチームが人材発掘とネットワークづくり、課題の研磨、プロジェクト創出を目指して活動しています。
うめきた2期は「みどり」を中心としたまちづくりをコンセプトにしていく予定で民間40社から提案があり、そのなかから国内外20社と対話を進めています。これらの情報をもとにしてまちづくりの方針を決定し、必要な都市計画を決定してまいります。今のところ26年度中に更地化工事を完了し、都市計画を立案、27~28年度から民間事業者の2次募集を開始し、34年度にはまちびらき、というスケジュールをおいています。また更地化完了後国から費用をいただいて関空へのアクセスを改善するため、特急「はるか」が通っているJR線の地下化事業を進めます。
御堂筋です。沿道では高さ規制の緩和をすることでビルの建替えを進め、オフィス一辺倒のエリアから休日・夜間のにぎわいのあるまちづくり施策をとっていこうとしています。そのためには御堂筋エリアのビジョンを制定し、都市機能と都市デザインを融合させていくことにしました。御堂筋そのものは6車線のうち緩速車線を車道以外に利用することなども考えています。沿道のまちづくりには低層部ににぎわい施設をいれてもらう、セットバックしてもらう、デザインをきめ細かくコントロールさせてもらうなどのルールを決めています。こたえていただける方には容積率の緩和などで支援してまいります。御堂筋では新橋(長堀)から難波まで側道を閉じる実験をしました。特に交通量に変化はなかったということでしたので警察にも協力いただき、長堀以北でも実験をしたいと考えています。
中之島ですが、3丁目まではすでに開発の計画が完了しておりますが、4丁目~5丁目がこれからです。4丁目は大阪市有地に新美術館を計画しています。その隣接地に大学を誘致したい。5丁目は扇町高校跡地を使いながらリーガロイヤルホテルさんの建替えを計画されているのでこれを契機に進め、4~5丁目全体で特にハイエンド人材が集積する新しい国際的な文化・学術・交流拠点にしていきたいと考えております。なにわ筋線の新駅もつくる予定です。
「エリアマネジメント(BID制度)」
ニューヨークで採用された法律にBID法があります。地権者がお金を供出して安全・安心・美化・地区プロモーションなどを進めていくものですが、これは今や世界中のまちづくりに活用されています。日本にはこの法律はありませんが、大阪版BID制度を検討しております。現行法規内でのスキームを組み立て、管理の質の向上や地区プロモーションの一部に地権者分担金を使っていく、という方針にしています。今年3月にはこの法律の手続きを決めましたが、今年度には、この手続きを活用した実際の事例もでてくると考えています。 大阪版BID制度適用を期待しているエリアは、うめきた・西梅田・中之島・OBP地区・御堂筋沿道地区・なんば駅前地区・あべの地区です。
「臨海部におけるまちづくりについて」
大阪府市IR立地準備会では、夢洲を軸としてIRを検討しています。もちろん議会との協議・調整のうえ、候補地を決定することになりますが、市長・知事の思いは夢洲です。咲洲では複数の市の街区を一括で開発するための事前確認の手続きをスタートさせたところで、コスモスクエア駅周辺が今後大きく変わることが期待されます。 IR法は議員立法になります。推進法、実施法のふたつの手続きが必要で春の通常国会で審議入りしましたので秋の臨時国会で審議され、12月には推進法ができるのでは、と予想されています。その1年後くらいに実施法が成立しますので、2020年に向けて稼動できるかどうかはこの年末に推進法が成立するかどうかが大きな局面になるのでは、とオールジャパンで注目されているところです。
国による地域指定の考え方は大都市型と地方型の2種類を組み合わせることと観光振興・経済振興効果が発揮できる可能性の高い地域を優先するというものです。国が地域を指定し、地方公共団体がIR事業者と契約したうえでカジノ運営については国が許可するしくみとなっています。
「国家戦略特区について」
特区の施行はこれまでに3度ありました。
小泉内閣の構造改革特区、民主党政権の総合戦略特区、そして今回です。
国家戦略特区はこれを突破口として大胆な制度改革等を実行し、国際競争力の向上を図ることが成果として期待されています。国際的ビジネス拠点の形成を目的とした、まちづくりに有効な規制緩和の初期メューは3点あります。
「エリアマネジメントの民間開放」で道路空間の利用による都市の魅力向上を図ることができます。
「容積率・用途等土地利用規制の見直し」では居住を含め都市環境を整備します。
「滞在施設の旅館業法の適用除外」は、旅館業法で30日以上滞在する施設ではフロント等が必要ないのですが、この滞在日数を短縮することによって外国人のニーズに対応していくことができます。
この他医療イノベーション、農業の民間開放、教育、雇用には特に力をいれております。
ちょうど今週から初期メニュー以外に緩和用件の提案公募がスタートしますので是非ご検討ください。
関西での国家戦略特区は大阪、兵庫、京都全域と養父市が指定されています。
関西圏特区については「医療等イノベーション拠点、チャレンジ人材支援」を目的としています。また、大臣、副大臣、関西3知事、塩野義製薬社、阪急電鉄社等をメンバーとして区域会議が実施され、深堀をしているところですが、法律成立後まもないので各方面に注意を配って情報収集をしていくつもりです。
なにはともあれ世界的には大阪の知名度は低いのが現状ですのでPRをしていきたいと思います。国交省が誘致してきたMIPIM JAPAN(来年5月)にも期待しておりますし、大阪広告協会の皆様にも是非大阪のPRをよろしくお願いします。
ご清聴ありがとうございました。
≪第2部≫「難波・ミナミのまちづくり」
・南海電気鉄道株式会社 グループ事業室 部長 和田 真治 様
南海電鉄の和田です。平素は当社およびグループ会社にご愛顧をいただき、ありがとうございます。
本日お話したいことは次の5点です。
① 南海電気鉄道株式会社とはどんな会社?
② 難波の変遷
③ ミナミはどんなまちか?(その強みと課題)
④ ミナミまち育てネットワーク
⑤ 「まちづくり」への提言(個人的見解)
私の話をお聞きになって皆さんがどんな反応をされるか、どう感じられるのかをお聞かせいただき、それを受け止めてまた我々のまちづくりの活動の参考にさせていただきたいと考えています。よろしくお願いいたします。
「南海電気鉄道株式会社とはどんな会社?」
実は南海電鉄はわが国初の純民間資本会社です。来年130周年をむかえます。1885年12月難波から大和川までが開通しました。現在は南海本線、高野線、空港線、泉北線等南大阪全域を線路でつなぎ、その沿線に関連する事業を行っています。事業の種類は運輸・不動産・流通・レジャーサービス・建設になりますが、皆様がよくご存知の施設で紹介しますと「チンチン電車(阪堺電車)」「関空リムジンバス」「瀞峡ジェット船」「なんばパークス」「ekimo(大阪市交通局の駅なか事業)」「スイスホテル」「みさき公園」「ホテル中の島」「住之江競艇」「大阪府立体育館(指定管理)」「大阪ゴルフクラブ」「橋本カントリークラブ」「有料老人ホームライフリレーションあびこ道」「葬祭場ティア」、「高野山中之橋霊園」などで、総合生活企業として、人の生活の様々なシーンに役立つ事業を推進しています。
運輸業では赤いラピートが耳目を集めていますが、これは南海だけでなく関空のアピールにもなっています。また、難波駅は乗降客100万人のターミナルで連携している鉄道も多く交通のクロスポイントといえます。難波周辺はショッピングだけでなく文楽・ポップカルチャー、道頓堀、木津市場などの歴史的・文化的コンテンツもそろっている上にMICEの充実にも十分こたえられる施設を兼ね備えています。
沿線の活性化は鉄道会社の共通の課題であり、沿線人口が減少する現状では、特に検討していかねばならないものです。まずは来年開創1200年を迎える世界遺産「高野山」は大きな強みです。さらに大阪府都市開発の買収とともに、取得いたしました泉ケ丘駅周辺です。近大病院が駅前に移転される予定であり、入居人口の減少や高齢化をふまえたうえでのニュータウンの再生は、国全体の問題であり、当社にとっても、運輸部門のみならず、流通・不動産セグメントの大きな課題でもあります。同じくトラックターミナルも南海が経営することによってより高度化していくなど、運賃の値下げだけでなく特急電車のダイヤ検討などのサービス向上を実現することで、難波に次ぐ第二拠点を泉北線において「泉ケ丘」「泉北エリア」のブランドを再構築してまいります。
「難波の変遷」
難波は当社の創業の地であり、経営基盤の中心地です。しかし難波またはミナミとはどこをさすかについては諸説あります。船場の旦那衆からみて、北の新地か難波の新地かどちらに行くかで、キタ・ミナミという呼称がついたというのはたしからしいですが、「ミナミ」「難波」の範囲がどこか、については「ミナミまち育てネットワーク」が緩やかに定義するまでは、決まっていませんでした。
(南海電鉄創業期から昭和時代の難波周辺や沿線・車内の貴重な写真を多数見せていただきました)
4代目の難波駅には高島屋さんがオープンされ、昭和20年の空襲でもかろうじて残りました。昭和初期は大阪市でも近代的都市づくりが推進された時期で、ミナミの玄関口にふさわしいターミナルを、ということで地下2階地上7階43000平米・デザイン外観にこだわった冷暖房完備の最先端ビルが建設されました。このころ御堂筋は拡幅されており、梅田との接続も便利になっています。
大阪球場は戦後の昭和25年、大阪の人たちを勇気付けるためにできました。工期わずか8か月でした。
ホークスの黄金時代とあいまって大いににぎわいましたが、ターミナルから離れた郊外にある球場とは違って、難波のど真ん中にありますので鉄道収入にたよっておれません。急勾配のスタンドの下部スペースを活かして事務所、料理教室や本屋等のテナントに入居してもらい、賃貸収入を得られるようにしたほか、アイススケート・卓球・ボーリングなどのスポーツ複合施設として集客力を高め、運賃収入を増やしました。残念ながらホークスの本拠地は福岡にいきましたが、当時のファンの方々は今でもホークスの応援を熱心にしていただいており、ありがたく思います。
昭和32年南海本社ビル南海会館が電鉄70周年事業で完成し、昭和50年なんばCITYが開業し、キタに負けない良質でおしゃれな新しいまちづくりを意識してきました。
サウスタワーホテルです。これまで難波には国際水準のホテルが存在していませんでしたので、関西空港開港による国内外旅客の利用増を見込んでワンランク上のホテルを平成2年に開業しました。その後平成14年にラッフルズ系列スイスホテルに転換しました。私は、その転換の仕事をさせていただきました。関空から30分の立地にホテルを作ると言うのは南海の戦略としてまったく問題ないのですが、新しいお客様を呼び込むためには南海グループ内の経営ではなく多数の顧客をもつ海外チェーンと組んだほうがよい、と判断したわけです。実際、難波駅や関空・ラピートなどがスイスホテルのホームページに紹介されており、世界中に当社の十分な情報が発信されている状況になっています。また、工夫したのは賃料体系です。固定+変動費とすることにより、当社が対ホテルだけではなく難波にこられるお客様に満足してもらってまち全体の活性化を図り、最終的に客数が増えることを考えるきっかけとしました。これにより、私は難波のまちづくりのこれまでとこれからを真剣に勉強し、考えるようになりました。
なんばパークスは、平成14年大阪球場の跡地にオープンしました。単なる商業施設ではなく、都市・人・自然が共生する新しいまちを具体化しました。当時の先進的設計を思い切ってとりいれているところと21世紀が環境の時代だと言うことで、直近の屋上庭園ブームの先取りをしているところを誇りに思います。
なんばガレリアはロケット広場を新規一転しました。難波駅の象徴として関空に向かうお客様や通勤のお客様の思い出・くつろぎの1シーンにしていただきたいと願っての空間開発です。広告価値を認めていただき、様々な「ガレリアジャック」のご提案をいただいています。本日出席の皆様にもご提案いただければと思います。総合インフォメーションも人通りが多いので商業スポットにしたほうがよい、という意見も出てきそうですが、まちの機能強化のために設置しております。
現行の新しい難波ターミナルのコンセプトは「伝統と先進」です。私鉄最古の本拠地ということで「保存再生」という手法をつかい、外装はほとんどさわらず高島屋さんの入っていただいている南海ビルを残し伝統を守る一方、ガレリア、屋上公園などの先進性を表現しました。ひるがえって、このコンセプトは難波だけのものではなく、南海電鉄という企業そのものであると考えます。私鉄最古であると言う会社として伝統を積み上げていくとともに、常に食堂車、冷房車、ラピートの導入などの先進性を追求することを両立させること。さらには、その先進性を追求し続けること自体を伝統にして参りたいと考えます。
なんばCITY開発以来、「みなみへみなみへ」が合言葉で難波の開発を進めております。再開発エリアにおける高架下開発も熱心にやっています。電鉄社員が大阪南部エリアで実地にさがしてきた飲食店に声をかけ、入居してもらった「なんばこめじるし」などユニークな試みをしています。
本社ビルはなんば第一ビルといいます。隣には咲州からzeppを誘致してきました。2-3階には当社と連携協定をしている大阪府立大学の観光産業戦略研究所(所長は橋爪紳也先生)が入居しています。ハルカスへの入居も検討されていたようでしたが、大学本体が南海沿線に立地していることから当社ビルにきていただくことになりました。「まちライブラリー」の試みもしています。とかく多いビジネス関連講座ではなく、老若男女が自分の感銘した、もしくは当日のテーマに応じた本を持参して会話をし交流を進め、まったく新しい図書館をつくる、という考え方です。府立大学学長がI-siteなんばという名称をつけてくださいました。当社が府大と同じように連携協定している河内長野市との3者の連携により、イベント・情報発信も行っており、地域の活性化に貢献していこうと考えております。
「ミナミはどんなまちか?(その強みと課題)」
難波会館ビルは平成31年春地上29階のビルに生まれ変わります。ターミナルビルの集大成となります。都市機能を高めインバウンドによりきめ細かく対応したものにしたいと思っており、なんばの都市格をあげる絶好のチャンスだと確信しています。ミナミを杜にたとえますと、難波ターミナルの高木と商店街の中木。さらにはそこに咲く老舗の名店。それを支え育む歴史・文化・人が土壌と考えます。こうした、杜を感じていただき、小さな花に目を向けていただけるよう、さらに森を大きく、高くし、歩きやすく住みやすくすること(清掃、案内等)が南海電鉄の役割だと自負しています。また「大阪はミナミや」という心意気をうまく醸成していきたいと思います。
データをご紹介します。大阪を訪問する外国人観光客数を8年間で4倍にしようという観光戦略ができています。ミナミは大阪観光のゴールデンルートとして定着してきました。まちの広がりですが、キタは大阪駅が中心地ですが、ミナミはモザイク状に広がるという特長があります。世界最大の旅行コミュニテイサイトであるトリップアドバイザーによると大阪市観光名所ランキングのベスト10のうち6位までに4箇所がミナミエリアのスポット(道頓堀・心斎橋・難波・なんばグランド花月)です。外国人向けポータルサイトでもミナミが3位にランクされています。関西在住外国人の人気についても大阪城をおさえてミナミが1位、行ってみたいベスト10には南海沿線の熊野三山と高野山がはいっています。ミナミは観光スポットとしての人気が高いのが強みです。反対に弱みは、雑然として汚くみえることや治安が悪いなどのイメージが高く、この弱みをまちの環境改善を進めてなくしていく必要があります。
「ミナミまち育てネットワーク」
1985年ミナミフォーラムが前身です。まちづくりの気概をもっている人はいるのですが、なかなか前に進まないのが実態でした。さらに産経新聞社さんのビル移転にともなってミナミ活性化委員会ができました。目的や活動をしている人々が重複しているので一緒にやりませんかということになりました。御堂筋に目を向けますと、淀屋橋から長堀周辺まではまちづくり団体がすでにありましたが、それ以南はなく、南海電鉄会長の山中がリーダーになって「ミナミまち育てネットワーク」を創設いたしました。観光集客と文化振興を目的に企業・地元・行政など120団体が参加しています。これだけ会員が多いとなかなか事業を進めていくにも難しいことが多かったように思います。南海電鉄は難波まちづくり推進室という部署を立ち上げてこの「まち育て」に積極的に関わっていこう、としましたが、社内には地元対策は難しいというイメージを抱く人も多数存在しました。それでも懐にとびこむ活動を2年間継続してまいりました。当初は苦言やけんか腰の態度もありましたが、今では壁は取り払われています。特に、地元の方には、仕事をこなしているだけなのかどうか、腹の据わり方と言うか覚悟力を試されているように感じましたし、業務への関わり方と同じで、本気でやるかどうか、ということだと教えられました。企業と地元団体や行政、企業同士で本気の「お付き合い」ができているかどうか、どうしたらできるのか、まちづくりの活動のなかで大変勉強させていただきました。
ミナミまち育てネットワークの活動ですが、今年15回目を迎える「ミナミジャズウォーク」の活動を後援しております。あちこちでジャズのイベントはありますが、駅ナカフリースペースでのライブや「ミナミ学生ジャズカーニバル」の開催や難波八阪神社の船渡御にジャズ船が参加するなど次代のファン作りもあわせて実施できているのはミナミだけではないでしょうか。
このころ難波のまちのコンテンツを取り上げて宣伝したポスターを手がけました。南海電鉄が間接的にしか収益に結びつかない宣伝をするのは初めてで、大変話題になりました。その流れは情報誌「NATTS」のなかの「なんばけーしょん」のコーナーに引き継がれています。まち育てについて企業と地元のベクトルを合わせるためにまちづくりビジョン「ミナミの未来」を作成しました。是非ご一読ください。ほんまもんのミナミを訪れた人々にその魅力を伝えることを第一の目標にしています。
あるとき「なんさん通り」で歩行者天国をやりたいという話がありました。地元団体で話し合ってみると、政治力を働かして実行に結びつける方法に賛成する人が多く、少し驚きました。都市計画の観点からつめていきましょう、と話をしてくれた都市計画をこれまでも手掛けていたミナミまち育てネットワークの会員企業があり、交通量調査から実施いたしました。歩行者天国は世界中にあるのだから、その流れも勉強しようということになり、大学の先生や他都市のまち育て団体理事の話も聞きました。地元に企業が加わることでぐんと進む体験をしました。「なんさん通り活性化協議会」は「なんば安全安心にぎわいまちづくり協議会」に名前を変えて大阪市の認定する団体になるところまで成長しました。5年かかりました。ここから橋爪先生や大阪府市の職員も参画していただくことになり、まち育てネットワークの成果がようやく目にみえてきたところです。たとえば御堂筋緩速車線の社会実験は官が規制緩和、民が費用負担という図式で実施されましたが、「なんさん」での取り組みがなければ生まれなかったことです。
ミナミべっぴんプロジェクトはばらばらにやっていた各地区の清掃を同時にやることによって観光客へのアピールややミナミ周辺の団体・個人への意識付けもねらっています。今年が2回目になります。
大阪光の饗宴は、フランスリヨン「リュミエール祭」をお手本に進めている官主導のイベントです。光のルネッサンス(大阪市)御堂筋イルミネーション(大阪府)を軸にエリアプログラムとして民間団体が参画しています。昨年まではミナミには連携する団体がなかったので、南海電鉄がやや前にでて、まとまってやろうじゃないか、という呼びかけを行い実現しました。おこがましいですが、数年前、本気で地元に入り取り組んできたことで、協力を得られたと思いますし、これまでの活動と人脈が生きていることを実感しました。名称も気取らず「まいどおおきに!大阪ミナミ 光マッセ!」として親近感をもってもらえるように、参加団体のメンバーで決めました。実はパークスでのイルミネーションも始めたところで、行政と連動することによってその宣伝広告効果もあがりましたし、今年、ミナミの悲願でありました御堂筋イルミネーションも終点が長堀から難波まで延伸してもらうことができました。さらに昨年のアートアワード(イルミネーションの人気投票)でなんば「光の滝」が一位になったことで大阪光の饗宴のポスターにエリアで唯一掲載されることになり、南海電鉄という企業体にとっても大きなリターンが期待できる状態になっています。
ミナミまち育てとは別に「ミナミ御堂筋沿道まちづくりの会」の設立準備がスタートしています。各イベントがそれぞれの歴史を刻みだし、また観光資源をさらに有効にしたいという民意が高まるにつれ種々の団体が自律的に活動するようになります。その流れの中で、ミナミまち育てネットワークの役割はその活動を、行政との連携の窓口や情報発信、緩やかな連携を行うなど後方支援を担うことになります。
「まちづくりの提言(個人的見解)」
さて、官民の連携についてですが、官が民に丸投げではなく、規制緩和やグランドデザインを描いていただければできることは増えてきます。また民も行政に要望するだけではなく、まずは自立した社会の一員としてやっていく姿勢が必要です。特に企業と地元はお互いの価値観の違いを認めて、利害関係は違うが、何が大切かという共通の目的をもとう、とする対話社会をつくることが重要ではないかと思います。そのうえで装置としてネットワークのようなしくみをもつことで実行力がつき、深みのあるハーモニーができてきます。
畢竟まちづくりは人探し、人づくりであります。熱い思いを持った人、仕事の一貫で所属団体代表として参画するのだけれど最終的には所属団体の価値観だけにとらわれずに個人の意志として活動できる人、立場をこえて第3案をつくっていける人が必要です。そういう熱意がまちづくりの基礎をつくっていきます。しかし課題も多く、専任のタウンマネージャーというプロが必要ではないかと思います。そうすると雇用にかかる費用が発生します。協賛してくださる企業を増やせねばなりませんが、これには限界があります。そうではなく、規制緩和により、事業・イベントを行うことや広告を掲載するなど、資金を生み出す官民の協業の仕組みが必要だと思います。当然、協賛する側は、おもしろそうか、役に立つか、という判断基準をもっておられます。それにこたえることができるかどうかも重要なポイントのように思えます。
大阪のまちづくりは梅田・あべの・難波で切磋琢磨することは必要ですが、事業性ばかり追求しそれぞれに多様性と個性がないと、オフィス、商業、ホテルなど東京化した地方都市のようになってしまいます。今こそ長い年月をかけて育まれた文化や生活を見直してみる必要があります。そのためにも、官民一体となった、グランドデザインを描く組織化、仕組み作りが重要だと考えます。
最後になりましたが、これからも南海の看板を背負った和田として、またミナミのまちづくりに立場をこえて取り組んで熱意ある人々の一員としてさらに大阪を発展させ、東京とは違うまちづくりを進めていきたいと思います。これを機会に皆さんのご協力もお願いいたします。
ご清聴ありがとうございました。

2014年8月6日

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