News平成25年度 第24回「全広連 夏期広告大学」 ≪広告新時代vol.2~ソーシャル・メディア時代のコミュニケーション戦略~最新事例紹介と研究≫レポート

平成25年度 第24回「全広連 夏期広告大学」
≪広告新時代Vol.2~ソーシャル・メディア時代のコミュニケーション戦略~最新事例紹介と研究≫ 講演録

 

「全広連夏期広告大学・大阪講座」が、7月11日(木)、「広告新時代vol.2 ~ソーシャル・メディア時代のコミュニケーション戦略~」と題して開催された。今回も前評判が高く、会員、一般社会人に加え、大学・専門学校の先生や学生の皆さん40数名を含む200名の参加があった。
講師陣は、いずれも(株)電通所属で、MCプランニング局の永富亘氏、デジタル・ビジネス局の吉羽一高氏、第5CRプランニング局の内田しんじ氏。永富氏は、「ソーシャル・メディア×メディア・プランニング」、吉羽氏は、「メディアの成長と進化」、内田氏は、「MASS VS SNS」とのテーマ設定で、それぞれ、活動事例を中心に、過去と今と近未来を捉えた大競争時代における生き残り戦略を、「やるなら、今でしょ!」とのスタンスで展開された。
大阪での夏期広告大学は、今年で3年連続の開催となる。

 

*講師*
永富  亘氏 (株)電通 MCプランニング局メディア・マーケティング室プランニング部
吉羽一高 氏 (株)電通 デジタル・ビジネス局メディア企画部
内田しんじ 氏 (株)電通 第5クリエーティブ・プランニング局 局次長


各講師 講演録

第1講 永富 亘 氏(ながとみ・わたる)(13:00~14:15)
「ソーシャルメディア×メディア・プランニング」

私は、テレビ・新聞・雑誌・ラジオのマス4媒体(現在は6媒体)を中心にメディア・プランニングを担当しています。“ソーシャルもしくは、インターネットの登場がどのような影響をマス媒体に与えたか?”そして“ソーシャルメディアとの付き合い方”をテーマに、今日はお話したいと思います。
最初に、1911年生まれで1980年に亡くなったメディア論の父、マーシャル・マクルーハンの言葉をご紹介したいと思います。「新しいメディアがその特性に気付いたとき、旧来のメディアもまた自らの特性に気付いていく」と彼は予言めいたことを言っています。“新しいメディア”という部分を“インターネットもしくはソーシャルメディア”に置き換えてみると分かりやすいかと思います。ソーシャルメディアが最初に登場した時、広告業界においては「とんでもないメディアが出てきたぞ!」と「旧来のメディアはダメージを受けるのではないか!?」と、恐れを感じた人も多くいたと思います。
実際ソーシャルメディアが定着して、その特性や関わり方が分かってきた時、上手く付き合えば広告コミュニケーションにおいて非常に有効であることも分かってきました。また併せて、旧来のメディアとしてのマスメディアもソーシャルメディアと上手に付き合うことで、大きな相乗効果が期待出来ると気付き始めています。

<はじめに>
・ソーシャルメディアについて
ソーシャルメディアには、twitterやmixi、LINE、GREE、他にAmebaやYoutubeのようなものがありますが、一言で表すと“ブログやチャット等消費者同士が自ら情報を発信し、さらに消費者同士が口コミでつながりを形成していく” Webメディアの総称です。
今や、すでに一般企業におけるソーシャルメディアの活用は、口コミによるバイラル化(広範囲に短時間で浸透させること)を促すマーケティング手段の一つとして一般化しています。今年のカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルにおいても受賞作品の大多数が“ソーシャルメディアを組み合わせたキャンペーン”でした。これは、既に普遍的なメディアとして定着しつつある証の一つだと思います。
もう少し詳しく、ソーシャルメディアに関して見てみますと、mixi・GREE・facebookという…“いわゆる”SNSと呼ばれているものもあれば、口コミサービスである@cosmeや価格.com、食べログ、さらに2ちゃんねる、Youtube等の動画共有・配信サービスもソーシャルメディアの範疇で、本当に多岐に亘ります。Webにアクセスする≒ソーシャルメディアを自動的に立ち上げているという勢いで、今やネット利用者の74%以上の人がそれらを活用していると言われています。

・メディア・プランニングについて
メディア・プランニングを一言で表すと、メディアを使って“予算の範囲内でターゲットに広告メッセージを効率的、効果的に到達させるために利用する媒体と利用法の最適化を図ること”と言えますが…これでは分かりづらいので、もう少し分かり易く説明します。そもそも、メディアとは“送りたい人が受け取ってもらいたい人に伝えたいこと(=メッセージ)を載せて伝えるための受け渡しのツール”と位置づけられます。
私たちの場合は、広告主様の伝えたいメッセージ、即ち「新商品」や「新しいキャンペーンが始まります」といった情報を生活者・消費者に伝える…その時に載せるツールがメディアとなります。広告コミュニケーションを仕掛ける側から、テレビ・新聞・雑誌・ラジオ・屋外広告・インターネット…等の様々なメディアをうまく組み合わせて、消費者とのコミュニケーションを図るわけです。

<メディア・プランニングの考え方>
・メディアの特性をうまく活用する
メディア・プランニングに当たっての基本的な話ですが、メディアの特性というものを、よく理解し、上手に活用することが重要です。こちらはメディア別の広告効果特性をマッピングし分析したものですが、例えば“理解する・比較出来る・価格が分かる”といった上で適切な媒体としては“雑誌広告・インターネット広告・折り込みチラシ”等が向いていることを表しています。“商品を知る、親しみがわく、興味を持つ”という項目…分かりやすく言うと、認知させて、商品への興味や関与を高めて…という点では“テレビ・ラジオ・交通・屋外広告”が向いている、ということが分かります。次に“信頼感を生む、企業の考えが分かる”という項目では“新聞広告”が有効というわけです。
例えば化粧品のキャンペーンを実施するとして、詳しく商品の特性を理解させることは15秒しかないテレビCMでは情報量的に難しいとしても…ターゲットに人気のあるタレントを使って“新商品の〇〇が出ました”という表現をすると「あの子が使っているから…」と女の子だったら興味を持ってくれる事が期待出来ます。つまり興味喚起と商品認知の効果が得られますね。一方、新聞広告の使い方としては、例えばお正月の企業広告が挙げられます。各社ともに、真摯な企業姿勢を年初に表明する…つまり真面目な内容で、企業への信頼感を獲得するべく、新聞の一面を使った広告を掲載しますよね。また、化粧品の話に戻るとテレビCMだと、タレントさんが使った新商品の名前ぐらいしか言えませんが、雑誌だと商品のスペックをきちんと誌面で伝えられますし、商品や使用したモデルさんの美しいメイクの仕上がり具合が写真で掲載されていて…という風にその世界観を含めてのプランニングが可能になるということです。さらに、皆さんも価格.comとか使われると思いますが、インターネットでは価格の比較や内容の評価を一覧で見ることが可能です。私たちは、このようにして、それぞれのメディアの特性を活かしてプランニングをしています。
・ターゲットの特性を見極める。効果的なメッセージを訴求する
メディアの特性を活かすことに加えて重要なのが、ターゲットの特性を見極めることです。私たちは、朝起きてから寝るまでの一日の間に、おびただしい数のメディアに接触しています。一日に接触している広告の数は約3,000。私たちが一日に見るテレビCMの数は約100と言われています。この膨大な数の広告の中で、印象に残るキャンペーンを実施するのは至難の業ですが…それこそがメディア・プランナーの腕の見せ所と言えるでしょう。
例えば…ということでメディアの特性とターゲットの動向について一時間単位でのメディア別の接触率のグラフを用いて説明しますと…例えば、30~40代の男女ビジネスマンが朝に接触する頻度が高いメディアは交通広告です。これは当然の話で、通勤時に接触しますよね。昼の12時に接点がポンと高く上がるのはWeb・モバイルです。ビジネスマンだと昼食の時間帯に、食事をしながらモバイルを使って調べ物をしたり、Yahoo!ニュースを確認したりすると思います。また、朝と晩に接触率が高くなるのが、テレビですね。出勤前にテレビをつけて身支度をし、寝る前にニュースを見て寝る…という習慣の人も多いのではないでしょうか。このように、接触率の調査データから、ターゲットが“いつ”“どのよう”にメディアと接触しているかを割り出すことが出来たりします。出勤前のビジネスマンをターゲットに、例えば朝のテレビCMで朝専用缶コーヒーの「ワンダ モーニングショット」が流れているのを見られたことがあると思いますが…適切なタイミングで、ターゲットに対して、商品の特性に合ったコミュニケーションを適切なメディアで展開していくこと。つまり、伝えたい人の特性を見極めながら効果的なメッセージを適切なメディアで訴求することが、メディア・プランニングだと言えます。

・マスメディアについて
マスメディアについて、今一度、定義したいと思います。マスメディアとは“少数者から不特定多数者へと多量に発信される情報媒体”です。日本語で「大衆媒体」となりますが、具体的に説明しますとテレビ・新聞・雑誌・ラジオ基本的にはこの4媒体がマスメディア。マス4媒体と言われています。ただ、屋外交通メディア(OOH)・Webといったものも、今ではマスメディアに括られ、マス6媒体と我々は呼んでいます。マスメディアの特徴として、到達規模の違いがあります。テレビを例に挙げると、地上波があればBS・CSや地元密着型のケーブルテレビもあって…と到達率の違いがあります。即ち、簡単に言うと視聴人数が違いますよね。ラジオもAM・FMとコミュニティFMのようなものもあります。新聞も中央紙もあれば、地方紙や業界紙等もあります。つまり、広く日本全国で読まれているものと、特定の人しか購読しない業界紙等ということですね。雑誌についても週刊誌があれば趣味誌もあり…様々ですね。交通メディアも乗降客が多いJRのターミナル駅のような場所もあれば、郊外の小さな駅の看板もあります。インターネットだとYahoo!もあれば、個人のブログもありますよね。それぞれマスメディアではありますが…到達規模、つまり接する人の数が違います。そして、ターゲットの特性に応じてメディアの使い方も変わります。
インターネットメディア登場までの環境というと、いわゆる、マスメディア主体の4マスの時代といいますか、消費者が受容可能な量の情報を一方的に受け取っていた時代であったと言えます。“テレビに出ているから、きっと良い商品だよ!”と思ってくれていた時代がありました。この時代のコミュニケーションは“ONE WAY”つまり一方通行のものでした。つまり、商品の情報をテレビ等で流しておけば、売れていた時代と言ってもいいと思います。しかし、皆さんご存知のようにインターネットメディアの普及によって、コミュニケーション手法は大きく変わりました。

<インターネットメディアが引き起こした2つの変化>
そこで、考えられるのが、インターネットメディアが引き起こした2つの変化です。1つ目が「メディア環境の変化」2つ目は「消費者の行動/態度の変化」。中でも、ソーシャルメディアがこの変化を大きく推し進めました。

・メディア環境の変化
まず、1つ目のメディア環境の変化についてお話します。テクノロジー・メディアの進展により、インターネットメディアを中心にコンタクトポイントの数が増加しました。Yahoo!、Google、SNSと個人によって、メディアを選択出来る時代になってきています。従って、かつてテレビはみんなのものだった…家族みんなで一緒に見ていた。その頃なら、そこに情報を流せば、皆さんそれを受け取っていましたが、今はそこにCMを出稿しても見ていない人達が増えてきたわけです。メディア環境が大きく変わったということですね。ここで、若年層のメディア環境への接触の変化を2000年から、2005年、2010年と5年ごとにメディア接触率の変化を10代男性、10代女性、M1(20~34才の男性)、F1(20~34才の女性)の若年層に絞って、その接触率の推移をグラフで出してみました。すると、右肩上がりで伸びているメディアがあります。これはパソコンとモバイルですね。当然ながらパソコン・モバイルの普及によりメディア環境が整ったので、伸びたということです。それに対して、これまで一番高い接触率を誇っていたのがテレビですが…減少傾向にあります。最近“若年層のテレビ離れ”とか言われていますが、こういったデータを見ることで傾向がよく分かると思います。そして、パソコンとモバイルの接触率のアップと共に、着実に増えているのが、ソーシャルメディアの利用者数です。こちらのグラフは、それぞれYoutubeやtwitter、mixiの利用者数の推移を表していますが、右肩上がりに伸びています。

・消費者の行動、態度の変化
2つ目の消費者の行動、態度の変化についてですが、情報過多の環境において、消費者は『自分に関係ない』と思った情報を遮断するという状況になっています。ここで、世の中の情報量と消費された情報量の推移を時系列で見ていくと、最初は世の中の情報量と消費された情報量にはさほど開きはありませんが、徐々にその差が大きくなっています。
つまり私たちは今、情報過多の環境にいます。広告も同じように、いろんな場面・場所で見られるようになりました。しかし、あまりにも情報量が多過ぎて、消費者はバリアを貼ったように自分に必要の無い情報を遮断してしまうようになっています。つまり、消費者に認知されずに素通りされてしまっている…そんな情報が溢れかえっているのが現実です。
消費者の行動も変わり、多様化してきました。かつては、アイドマ(AIDMA)と呼ばれる消費者行動モデルでした。Attention=CMに気付いて、Interest=CMの商品やサービスに興味を持って、Desire=欲しくなって、Memory=その商品のことを記憶して、最後にAction=行動する…つまり店頭に行ってその商品を買うというものでした。先ほどお話したONE WAY型ですね。非常に広告コミュニケーションもシンプルな時代だったのです。しかし、インターネットメディアが登場してからは、そのモデルでは括りきれなくなりました。例えば行動モデルはAISASに変わりました。Attention自体は変わらないのですが…Interest=商品やサービスに興味を持ったら、Search=検索をしてスペック等を調べる。そしてAction=買った人の中でさらに商品についての情報をShare=書き込んだりして共有する…というものです。例えば、CMで家電製品の発売を知って、検索して価格.comとかで調べて“あっ!これなら買いだ!”と思って、購入して…評価を書き込む。そのシェアされた情報をさらに別のSearchした人が、調べて見つけて“この人が良いと言っているから買ってみよう”という循環も生まれています。ここで「広告を見てキーワードを検索した」という、各年代のスコアをみると、全般的に男性が多いことが分かるかと思います。男性は、商品にまつわる情報に興味を持ち、よく調べるという傾向があるようです。消費者の行動や態度も、年齢や性別のほか、いろいろ変わってきたので注意する必要があります。

<ソーシャルメディアをプランニングに活用する際の留意点>
・消費者が主役の場、消費者が感じたことを発信する。
ではここで、ソーシャルメディアの特性とメディア・プランニングのフローについてお話したいと思います。ソーシャルメディアの特性を一言で言うと“沢山の人たちが集まって、仲良くパーティをしているところ”そんな感じかなぁ…と思います。本来は、企業がマーケティングをするために存在する場所では無い。というのもtwitter等で、友達同士で繋がっていて、そこで盛り上がっているところに、いきなり企業が出てきて「ウチの商品、いいので買って下さい!」と言っても…ウルサイだけじゃないですか?そういった意味で企業がマーケティングするための本来の場所ではない。つまり、従来通りのONE WAY型のコミュニケーションでは“ウザイ”と思われて終わり…どころか炎上する可能性もあります。そういう点からも、ソーシャルメディアの特性を見抜くことが重要だということです。では、ソーシャルメディアをプランニングに活用して行く際に、注意しなければならないことを提示させて頂きます。1つ目は“消費者が主役の場”であるということです。企業がなんと言おうと、消費者自身が感じたことを発言する。広告というのは、やっぱり商品の良い所だけを伝えたいものです。とは言え、例えばこの商品についてどう思いますか?と消費者に聞いてみると「私はあまり好きじゃない…」とか「デザインがイマイチ…」とか色んな意見が出るのが普通ですし、ソーシャルメディアではありのままの意見を書き込んでしまいますよね。そして、そのまま拡散してくので、もし企業主体のコミュニケーションをしようとしてもコントロールが難しい。あくまで消費者が主体であると言えます。次に“消費者同士の意見に影響される”。特に知人、友人の発言に影響を受けやすい。広告商品に関して、企業が「この商品は良い!」と言うのと、友達が「この商品“使ってみて”良い!」と言うのとでは、説得力が違うと思います。そういった意味で、消費者同士の意見に影響されるということですね。なので、発言力のある消費者に良く思ってもらうことが重要です。続いて“マスの情報に反応しやすい”。大きなニュースやテレビ番組等マスの情報に対してソーシャル上で発言・議論されることが多い傾向にあります。ニュースの話題とか、あとテレビ番組の話題とかですね。例えば、ラピュタの「バルス」という有名なセリフがありますよね。あれがテレビの番組で再放送されていた時に、そのセリフをテレビで言う瞬間に一斉に皆さんが「バルス」とつぶやいて、その時のtwitterのつぶやき数が世界記録になった…という事例があります。マスに対して、非常に反応があるということです。これらの注意点を踏まえて、ソーシャルメディアの活用を考えることが大事だと思います。

・“ジェネレーションC”に響くコミュニケーションを展開する。
テレビの若年層離れということを申し上げましたが、“ジェネレーションC”という世代が登場しています。今日も学生の皆さんが前の方に座っていらっしゃいますが…まさに皆様のような10代・20代の方々で、生活の中でソーシャルメディアやスマートフォンがあって当たり前。さらに複数のデバイスを使いこなす若者たちのことです。Cから始まる言葉でその特徴が表現されることから“ジェネレーションC”と呼ばれています。“Creation=自ら動画等を制作しアップロードする”“Curation=自分が良いと思うコンテンツを友人とシェア、セレクトのセンスによって自己表現する”例えばシェアする情報というのは、変な記事とかはツイートしないですよね。やはり、自分が面白いとか、友人が見ても面白いとか、楽しんでもらえるだろうな…とか思ってシェアしていると思います。そういう意味では、Curationという行為を自然と自分の中で行っていると言えるわけですね。次は“Connection=双方向のコミュニケーションが実現するSNSでいつでも繋がっている”。皆さん、普通にLINEとかで連絡を取り合っていると思いますが、そういったSNSが普通に一般化されていて、友人知人とつながっている。そして“Community”を大事にし、いつでも“Communication”をとっている…そういう人々ですね。企業のマーケティングでも、よく「若年層対策」という言葉が出てきます。そういった人たちを攻略するときに、非常にソーシャルメディアは有用なのですが、その時にジェネレーションCの特性を見た上で、彼らに響くコミュニケーション展開をすれば、一気にキャンペーンが拡散される可能性があるということです。

・キャンペーン効果を“最大化”するには
最近、facebook上で話題になったキャンペーンがあります。三菱電機の“ハイブリッド霧ケ峰スペシャルWeb企画”なのですが「出川哲朗からの挑戦状」というもので、非常に面白く、思わず魅入ってしまいます。どういう内容かというと、リアクション芸人として有名な出川哲郎さんが、熱湯風呂・お灸・アツアツの鍋焼きうどんに挑戦する…というものです。なぜそういったものに挑戦するのかというと…実際に熱いものと、そうでないものを用意して、その両方のリアクションを見てどちらが本当に熱いものか…を我々が見極めて選択していくという仕掛けになっているわけです。その時に、正解を披露する場面で、エアコン「霧ヶ峰」の温度判定機能を訴求していく。普通に見ればどちらが本当に熱いか…というのは分からないのですが、霧ヶ峰の温感センサーで見ると、出川さんの入っているのはどちらが本当に熱いお風呂か…が丸分かりになっています。すると、この霧ヶ峰の温感センサーは部屋が熱くなると涼風を送り込むというシステムなので…霧ヶ峰から熱い方、つまり正解の方に冷風が送られる…という見せ方です。非常にユニークな形で商品特性を訴求しているということで、非常に好意的にソーシャルメディア上で拡散しています。
先日、Google及びYoutubeのクリエーティブソリューションのディレクターであるマイケル・ヤップ氏の講演会があったので、聴きに行ったのですが…その時にソーシャルメディアをメディア・プランニングに活用するときに、本質的な言葉だなと思うことを仰っていたので、ご紹介したいと思います。「(自分が)時間を使う価値があるか?」「シェア出来るほどの価値はあるのか?」こういった要素を踏まえながら、彼はプランニングしている。これはまさに、ソーシャルメディアにおけるプランニングを語るときのキーワードだと思います。先ほどの霧ケ峰の例のように“温感センサーで自動感知し、涼風を送る”という機能訴求が、あのような形だと思わず拡散しちゃいますし、それにより企業のメッセージもより多くの人に届けることが可能ということですね。
では、ソーシャルメディアのメディアとしての力はどうなのかという部分を考えてみたいと思います。例えば、twitterは既に約1,500万人が利用しています。これは、もう立派なマスメディアです。しかし、平均のフォロワー数が約58人(※ソーシャルメディア白書2012より)ということを考えると…末端の全員にまで情報を行き届かせることは至難の業であることが分かるかと思います。1,500万人の全ての人に届くまでツイートされたり、リツイートされるようなニュースでないと、拡散していきません。つまり、商品やサービスについて数千万人規模で到達させようと思えば、マスメディアによる広告およびPRを活用する必要があります。ソーシャルメディアはあくまでも、傾聴やキャンペーンを膨らませるツールとしては非常に有効ですが、“どれくらいの人に到達するのか”ということをコントロールしにくい…つまり成果の予測が難しいため、キャンペーンの主軸として活用しづらいということです。さらに途中で申し上げましたが、ソーシャルメディア上での話題のコントロールというのは不可能です。消費者が思ったことをつぶやく、商品の悪口も書かれてしまうということです。繰り返しになりますが、企業主体の情報発信方法は通用しません。
これに対して、マスメディアはメッセージをメディア特性に合わせて訴求可能です。そして、媒体力に応じて到達率等もシミュレーションが可能です。これが冒頭の方で申し上げた、マスメディアの特性ですね。しかし、ソーシャルメディアは関心を持たせなければ、スタート地点にも立つことが出来ない…つまり伝播していかない。ということなので、ソーシャルメディアの場合は、例えば企業が商品のアカウントを通じて、コミュニケーションを重ねることで、消費者のブランドや企業の好意度や理解度、購入意向等を“じっくりと育てていく”という使い方が非常に有効かつ大事かなと思います。ソーシャルメディアならではのコミュニケーションを継続的に実施して、キャンペーン効果を“最大化”することが可能だと思います。

・時代は、トリプルメディアアプローチ
更に、メディア環境の現状について説明します。時代はトリプルメディアアプローチと言われています。それは、以下の3つに分類されます。1つ目は“Paid Media=枠を買うメディア”。これはテレビ、新聞等のマスメディアですね。いわゆる旧来型のメディアです。そして2つ目が“Owned Media=枠を所有するメディア”。これは企業の自社サイトであったり、会員登録者へのメールマガジン配信といったものです。そして3つ目が“Earned Media=信頼や評判を得るメディア”。これが、いわゆるソーシャルメディアですね。それで、それぞれのメディアの位置づけですが、まず“Paid Media”つまりマスメディアですが…役割としては、まず「認知」をさせ、興味を持った人を“Owned Media” &“Earned Media”へ送客および誘引するというものです。“Owned Media”が誘引先であった場合は、そこで「理解・促進」を図る。例えば、テレビCMを見て霧ヶ峰に興味を持った人が検索をして、企業の霧ケ峰のキャンペーンサイトへと行って…商品のスペック等を調べる、ということです。
もう一つの流れが“Earned Media”への誘引。つまりソーシャルメディア…例えば価格.com等で、霧ヶ峰の評価をチェックするというような流れがあります。ここで特設ページ等を設置し、有益な情報発信と双方向コミュニケーションでファン化を促進させることが可能です。また、Owned Mediaである企業のキャンペーンサイト内で霧ヶ峰のスペックを見た上で“実際の購入者の声はどうだろう?”ということで、Earned Mediaへ飛ぶ…また、その逆も…というような双方向の動きもあります。これらトリプルメディアを上手く組み合わせてメディア・プランニングをしていくことが、必要な時代となっています。

・量的コントロールと質的コントロール
それでは、ソーシャルの話に続き、コミュニケーションの起点となるマスメディアの特性を説明します。ソーシャルメディアとマスメディアの最大の違いはなにかな…と考えてみると、コントロールが出来ないソーシャルメディアと違い、マスメディアはある程度ですが量によるコントロールが可能です。
こちらの消費者の購買プロセスおよび心理変容プロセスの図をみてみますと、まず、メディアに接触してから、広告を“認知”した後に“興味・好感を持つ”という心理変容が起き、“試したくなる・欲しくなる”という行動レベルに達し「実際に店頭で見ようかな…」となり、最終的に店頭で商品に触れて…気に行ったら購入に至るというプロセスを辿ります。だいたい接触してから…購入するまで、もちろん全員が商品を買ってくれるわけはないので、徐々に人数はフェーズが進むことに離脱していきます。それで“接触”“認知”の部分…つまり、プロセスにおける入口となるフェーズですね。このフェーズは、マスメディアの場合は量である程度コントロール可能となっています。そこから先のフェーズは、例えば広告に起用されているタレントさんが好きか…もしくは嫌いか…といったことで“興味を持ってくれる人”と“興味を持ってくれない人”とに分かれますし、さらに行動レベルで店頭まで行くと、じっくりと使用感やスペック等を検討した上で「この商品はあまり良くないかもしれないな…」と思うかもしれません。
つまり、フェーズが進んでいくとマスメディアの影響力はどんどん弱くなっていきます。ただ“接触”“認知”までは、マスメディアで量によってある程度コントロールが可能ですが、“なかなかコントロールしづらい”と先ほどお話しました。そこから先の…心理変容レベル、行動レベルのフェーズまでいきますと、ここでソーシャルメディアが非常に有効になってくると思います。“接触”して“認知”して調べた人が、価格.comを見て良い口コミがあったりした場合ですね。その良い口コミを見たことで「実際に店頭で見てみようかな?」という“行動レベル”へと人は促され、より多くの人をさらにその先の購入のプロセスまで持って行くことが出来るのではないかと思います。というのも、価格.comの例でみますと、デジタル機器を購入した300人のうち53.6%が事前に価格.comと接触。特に、レビューが購入の決め手になったとする人が78.3%を占めたという実際の調査データ(※サイバー・コミュニケーションズ調査より)があります。ターゲットに対して、ソーシャルメディア上で商品の特性を上手くコミュニケーションすることが非常に重要なのではないかと思います。

<マスにおけるメディア・プランニングの考え方>
ということで、マスメディアに関するプランニングの考え方をご説明していきたいと思います。媒体に“接触”してから広告を“認知”し、“心理変容”が起こり“行動”に至る時に、以下のような効果指標があります。“広告に接触した人”はどれくらいいたか?その内、“その広告を覚えていた人”はどれくらいいたか?その中で“購入したいと思った人”はどれくらいいたか?その中で実際に“行動した”“購入した”人はどれくらいいたか?それぞれに、リーチ/フリークエンシー/視聴率/閲読率/GRP …等の指標があるのですが、この中で代表的なものについて今日はお話したいと思います。

・リーチとフリークエンシー
“媒体接触”と“広告認知”のレベルは、マスメディアでほぼコントロール出来るフェーズです。ソーシャルメディアが活きるのは“心理変容”と“行動”レベルのフェーズですね。では、非常に基本的なお話をこれからしていきたいと思います。媒体接触レベルの指標として“リーチ”というものがあります。このリーチは何かというとターゲットの中で、使用メディア/広告に接触した人の割合です。例えば、10人(世帯)でなる世の中に、4回のCMオンエアーがあったとした場合ですが、4回のオンエアーの内、Aさんは3回目と4回目しか見なかった、Bさんには一回も当たらなかった。Cさんは1回目と2回目と4回目に当たった。Dさんは1回だけ…という風にこの図のように並べてみたとしましょう。一回でも普通に接触した人を見ていくと…10人中7人が見たことになります。なので“リーチ=70%”ということになるわけです。次にフリークエンシーという概念があります。これは接触回数…あるターゲットがその広告に接触した回数を言います。なので、Aさんは2回、Bさんは0回、Cさんは1回…という風になるわけですね。さらに、広告に接触したターゲットにおいての平均、つまり接触の回数を個人毎に割り出して足し合わせた上で総人数…この場合は10人で割ると算出されるものを“平均フリークエンシー”と言います。今回の場合は平均フリークエンシーが1.57回…ということで、数字を丸めて1.6回、これがCMを流した時の平均的な接触回数となります。

・視聴率とGRP
そして、視聴率とGRPという話に移りますが、GRPはGross Rating Point : のべ到達率の略ですが、広告出稿の総露出規模を表す量で、広告到達率の総和です。分かりやすく言うと視聴率ですね。GRPというのは視聴率の総和だと思ってください。なので、CM1回目はCさんEさんHさんが見ている。2回目はCさんしか見ていない…というように、それぞれのオンエアー毎に、視聴率が出ますが、それらを足し合わせると110%となるわけです。テレビスポットでは視聴率の和であるGRPが売買の単位となります。また、リーチ×平均フリークエンシー=GRPの関係があります。GRPの概念については、例えば1回で沢山の人が見ているという“広く、浅い”場合もあれば、同じ人が何回も見ている…という“狭く、深い”場合もあるわけです。

・有効フリークエンシー
マスメディアに関しては、量でコントロール出来るというお話をしましたが、出稿量の策定方法には3つの基本的な手法があります。プランニングの際にはこれらの手法を用いて、戦略を踏まえた上で“使い分ける”“組み合わせる”ことが重要となっていきます。本日はマスメディアの中でもテレビの話ばかりになっているのはなぜか…と言うと、テレビが最もデータが揃っていまして、細かく量と効果の関係性が見えるので、今回はテレビを主体にお話させて頂いております。
基本的な手法としましては「有効フリークエンシー」「リーセンシー」「SOV」この3つがあります。今日は量のコントロールに関して…ということで、有効フリークエンシーに絞って説明させて頂きたいと思います。
有効フリークエンシーですが、これは“広告が効果を発揮するのに必要な接触回数”です。分かりやすく言えば、広告を“認知”させるためには“何回ぐらい”CMに接触させれば、認知させられるかを様々な過去のキャンペーンデータから割り出すことが出来るというものです。相当インパクトがあって面白いCMでない限り、1回見ただけではCMを覚えてもらえません。2回で覚えてもらえれば、相当優秀なCMだと思います。あるCMはターゲットに3回見せても中々覚えてもらえない、4回目でやっと認知した…というふうに、CMによって認知させるために必要な接触回数は変わってきます。
有効フリークエンシーは様々な条件で変動がありますが、例えば10代の方が、高齢者向けの商材である「皇潤」のCMを見たとしても…そもそも興味がないので、中々覚えてくれません。これは10代の方にビールのCMを覚えてもらえるための有効フリークエンシーを割り出したものですが、ある商品では12回の接触で覚えてくれます。対して、30代以上のビジネスマン男性ですと、4~5回の接触で覚えてくれます。そういった商品への関与の違いによって、必要な接触回数も変わってくるわけです。例えば“商品特性”ですね。新製品よりも既存品だと思い出しやすい。例えば、昔からずっと続いていて…誰もが知っているお馴染みのカステラの文明堂の「カステラ1番、電話は2番、3時のオヤツは文明堂」のCMだったら、一回接触しただけでも思い出しますよね。シリーズものか…それとも新商品かで、必要な接触回数は変わってくるということですね。続いて“商品ジャンルの関与度の高低”これは先ほどご説明したビールの例の10代と30代のビジネスマンとの差…つまり興味の違いですね。あとは“広告表現”ですね。タレント使用の有無…やはり、ビッグタレントを使ったCMだと覚えてもらいやすい傾向にあります。あとはCM秒数の違い…15秒か?30秒か?でも違いが出ます。
こちらは有効フリークエンシーの概念を用いて、目標とするCM認知率を達成するために必要な出稿量を割り出す時によく使われる“リーチカーブ”と呼ばれるグラフです。横軸は世帯GRP…先ほどお話したテレビの出稿量の単位ですね。それに対して、回数別のリーチ=到達率を縦軸におきます。ターゲットの有効フリークエンシーが5回以上接触だとした場合、ターゲットの60%に認知させたいと考えると…この5回以上接触者の回数別リーチの60%の箇所を見れば、必要な出稿量が1,500GRPというのが割り出せます。つまり、1,500GRPの量を出稿すれば、60%の人が認知してくれるだろう…と割り出せるわけです。このようにマスメディアに関しては、量で“接触”“認知”のフェーズをコントロール出来ます。

<ソーシャルメディアが持つ“チカラ”>
それに対して、ソーシャルメディアは量的コントロールは不可ということで、質的なコントロールという話になってくるかと思います。アカウントを通じてコミュニケーションを重ねることでブランドへの好意をアップさせる…といったような使い方ですね。つまり役割が違うのかなと思います。
量と質のコントロール…つまり、マスとソーシャルメディアを組み合わせて相乗効果を生み出すことが求められているわけです。マスメディアで“認知”させた上で、ソーシャルメディアでブランドや商品に対する“好意形成”をおこなう。
この両メディアを上手く組み合わせて活用することがメディア・プランニングにおいては重要となるわけです。例えば、某電気製品のキャンペーンのテレビCM出稿量とSNSサイトの閲覧数の相関関係を見ると、テレビCMを出稿すると、SNSサイトでの当該商品ページの閲覧数が増えていることがわかります。ということで、マス(テレビ)とSNSは非常に連動している。そういう意味で、マスはSNSサイトへの誘引効果が期待出来るので、マスとソーシャルを上手く組み合わせることが大事だということです。つまり、テレビで関心を持った人がSNSで商品について調べてくれて…口コミ等を見ることで好意形成に繋がり、最終的には購入…という流れが理想的ですね。
次に“ソーシャルメディアが持つ力”についてお話したいと思います。ソーシャルメディアが持つ“チカラ”を私なりに3つに分類してみました。“拡散力=キャンペーンやコンテンツを一気に拡散させる力”“浸透力=ユーザーやフォロワーに、寄り添う形で恒常的に情報発信し、ファン化を促進。関与度や好意度をアップさせる力”“対話力=消費者とのコミュニケーションツールとして有効。企業のアカウントを通じて、企業と消費者が直接対話が可能”この3つです。3つ目の“対話力”の事例として某コンビニチェーンの事例をご紹介すると、twitterの公式アカウントを通じて「あなたが食べたいおむすび」のアイデアを募り、実際に商品化した…という事例があります。
これら3つの力を上手く融合させることで、ソーシャルメディアの力は最大化が可能なのではないかと思います。繰り返しになりますが、マスメディアによる量のコントロールで広告を“認知”させ、心理変容したターゲットをどれだけ“行動”そして“購買”のプロセスへと移行させるかという点においては、この3つの力を連動活用した質のコントロールがキモだと思います。

・ソーシャルとマスの相乗効果
ここで、ソーシャルメディアとマスメディアの組み合わせということで、私が個人的に「これは美しい!」と思う企業キャンペーンをご紹介します。そして、これまでにお話してきたメディア・プランニングのフローに登場してきたキーワードと共に分析していきたいと思います。ちなみにこの企業様を私が担当しているわけではないので…あくまで、一個人のメディア・プランナー、一消費者としての見解ということをご了承下さい。
それは、ソフトバンクモバイルのキャンペーンです。まず、媒体接触レベルですが、充分なリーチ&フリークエンシーを獲得する出稿量(GRP)を常に出稿していると思います。テレビでソフトバンクの新キャンペーンが始まったら「あっ!始まった!」と、皆さんなんとなくでも認識されていると思います。それは、認知するのに十分な出稿量を常に出稿しているということになるかと思います。
次の広告認知レベルに行きますと、犬のお父さん・白戸家の面々のような人気のキャラクターが登場する…人気のシリーズ広告ですよね。また、話題性の高いメッセージや旬のタレントのキャスティングも上手です。例えば、AKB48卒業直後の前田敦子さんを起用したり、人気のゴールデンボンバーを使ったり…今ですと大活躍中の香川選手を使ったりと…話題の人物を起用する。だから、非常にインパクトが高い。その点で行くと、先ほど言いました有効フリークエンシーも少なくて済む。つまり、投下量に対して少ない回数で認知させることが可能なのではないかと思います。つまり非常に認知効率が高いのではないかと。続いての心理変容レベルですが、認知効率の高さに伴いCMの内容理解率も高くなります。“ソフトバンクのCMである”ということは、パッと見ただけで認知してもらえるので…後は深い内容である具体的なサービス、例えば「学割」のような伝えたい要素を認識してもらえ、理解させることが可能なわけです。内容理解率が高いので、興味関心度も好感度も必然的に高くなる。結果的にソフトバンクのCMは6年連続好感度ナンバーワンCMということで、実際に上手く設計されているな…と思います。
さらに、このようにマスメディアで興味関心が高まった状態で、ソーシャルメディアに人々は接触している状態にあります。マスメディアで関与が高まったターゲットに対して、先ほどの“3つの力”がありましたけれども、それぞれが有機的に機能しているなと思います。例えば「拡散力」ということであれば、AKB48脱退直後の前田敦子さんの起用ですね。旬のゴールデンボンバーやSMAP全員登場等による話題の提供や、ニュース性が高い情報を上手にテレビ以外の新聞等のマスメディアでも訴求しています。なので「あっ!前田敦子が出てるわ!」という感じで、twitterやfacebook上等で拡散していく…ということですね。「浸透力」これはファン化や好意形成の促進ということですけれども、犬のお父さんがアカウントを通して、CMに連動したキャンペーン内容を呟いています。これはですね…小さくて後ろの方の席の方とかは全然見えないと思いますが、ゴールデンボンバーの樽美酒さんがプロ野球の開幕戦で始球式を行った…というニュース的なつぶやきに対して、白戸家のお父さんのアカウントが、犬のお父さんのキャラクターそのままで「そいつ誰だっけ?」みたいな…トボケた返しをしているものです。こんなCMの世界観を上手く活用したコミュニケーション展開により、“ファン化”が促され、商品やサービスへの好意形成が促進する…と思われます。あと、「対話力」を見てみますと…孫さん、孫社長ですね。フォロワー数が190万人以上います。企業のトップの中では断トツでフォロワー数が多い。それはなぜか?それは直接の対話が可能で、その対話の中からニュース性のある展開が生まれるからだと思います。企業のトップとも直接対話が出来るというのは、ソーシャルの魅力です。孫さんにまつわる事例を紹介しますと…これは“下取り価格の値上げをお願いします”という、一般のソフトバンク・ユーザーの孫社長に対するつぶやきに対して、孫さんが「やりましょう」と下取り価格の値上げの意思表明を返信したつぶやきなんですが…要望に対する回答をすぐにその場で出したということで、「おおっ!孫さん!やってくれたよ!」というつぶやきがソーシャルメディア上で生まれ、拡散していき、注目度が上がり…様々な他メディアにも取り上げられ、多面的に露出されていく…というようなことが起こっています。ソフトバンクの場合はtwitterがメインなのですが、ソーシャルメディアとマスを上手く連動させて、キャンペーンを展開しています。また、twitterの特性を活かし、フォロワーに対してリーセンシーとフリークエンシーの概念で質のコントロールもおこなっています。例えば、“新キャンペーンのCMが始まります”といったような内容を、twitter上で白戸家のお父さんがフォロワーに向かって恒常的にコミュニケーションを図っていくことが可能ですので、狙った良いタイミングで告知が出来るということですね。そして、必要であれば何回もフォロワーに対してコミュニケーションが可能ということです。
ちなみに、今までの視点は、あくまでマスメディア起点の場合のソーシャルメディアでのキャンペーンの広がりをお話してきました。ただ、ソーシャルメディア上で「ソフトバンクのCMって面白そうだな」と興味を持って検索し、テレビCMを動画サイト等でみて、「あっ!あのCMだ!」とテレビCMを前のめりになって視聴するという…ソーシャルから、マスメディアへの還流パターンもあります。私自身もそうで…前田敦子さんが“フライング・ゲット”とポーズをとるCMがありますが、こちらに関して、私はそれをテレビでは見ていませんでした。前田敦子さんのモノマネをしているキンタローさんが、自分の持ちネタである“フライング・ゲット”を本家の前田敦子さんが逆にマネをしたCMを見て、感涙した…というソーシャルメディア上の記事を見て「このCMを見てみたい!」と自分から動画サイトで検索して「あっ!あのCMだ!」とテレビCMを前のめりに見た…という経験があります。ソーシャルからテレビへ…というこのような流れもあります。

<ソーシャルメディアとマスメディアは、足し算ではなく掛け算>
ソーシャルメディアが登場してきた頃…打合せの場でしたり顔で「とりあえず…ソーシャルメディアはマストだよね」と言うスタッフをよく見かけましたが…これは違うと思います。本日お伝えしたかったのは、ソーシャルメディアとマスメディアは足し算ではダメで、掛け算でなければならない。つまり、ソーシャルとマスメディアを上手く融合させてこそ、お互いの力を最大限発揮出来る状況が生まれるということです。私は、常にソーシャルメディア×マスメディアということを念頭に置いて、取り組んでいきたいと思っています。皆さんもメディア・プランニングの際には、このキーワードを思い出して頂ければ、大変有り難く思います。

 

第2講 吉羽一高 氏(よしば・いっこう)(14:20~15:35)
「メディアの成長と進化」

最初に、自己紹介を少しさせて頂きます。
私は、2007年の4月から電通に入社して、6年になります。電通に入る前は、インターネット広告会社での事業立ち上げや、自分で会社を立ち上げて経営などを行っていました。
電通では幅広い業務に携わらせて頂いていますが、そのひとつとして、ゲームアプリも作っています。事例紹介含めて、ある映画のプロモーション用のゲームアプリの話をさせて頂きます。
ゲームの種類としては、当時、話題の位置情報系のゲームです。これは、プロダクトを作る時に、基本的に考えないといけないことなのですが、ユーザーがそのプロダクトに割いてくれる時間はわずかで、作り手が、すごいものを作って、これだけ、すごい!と言っても、ユーザーがそれを理解するまでに時間がかかるものは、たぶん使ってもらえません。特に、キャンペーンものだと、ユーザーが割いてくれる時間は短いです。そこで、意識したのは、ゲームの骨子をすぐに解ってもらえるようにすることでした。なので、みんなが知っているジャンケンをゲームの遊びの核にして、グー・チョ・パー、これで、だいたい誰もが解るルールで構成されるゲームという形で作っています。画面に数字が書いてあって、あいこになると、その数字が溜まっていきます。最後に、数字が多く溜まっていくと、ダメージが出るという仕組みを1個入れることで、相手がすごく強くても、弱い人が勝てる。その逆も起きるということを組み入れています。もうひとつ、グー・チョキ・パーこれが、全部1個1個並んでいたら、単なるランダムゲームでしかないのですが、2つまでは同じものが出てくる設定にしています。すると、ここが、グー・グー・パーで、こっちが、チョキ・チョキ・グーとかだったら、その時の確率論で、どういうふうに出せば負けないのか、また勝てるのかということを考えられる。そういったゲームの基本設計を意識して作っていました。
他にも、ゲームはいくつか作っていて、あるクライアントさんでは、女性向けのツイートなので、恋愛シミュレーションゲームを作ってみようということになって、出来上がったゲームです。今流行りの恋愛シミュレーションゲーム系にイケメン君を集めて、楽しめるゲームです。
あるアーチストさんのお手伝いもさせて頂いていて、その方のCDを買うとシリアルコードが入っている。そのシリアルコードをそのアーチストさんのフェイスブックに入れると、特別な動画が見れるという仕掛けもやっていました。

さて、ここから、ようやく講義の内容に入っていくのですが、夏期広告大学でお話をさせて頂くということで、「現在のトレンドから将来をどう見据えるか、自分の事業をどう反映させるか、学生の人からすると今の広告の分野で働いている人、頑張っている人はどういう思考で、その仕事に向き合っているか、ということをお伝えすることが、重要だと思います。」
ついては、ソーシャルの話も出てきますが、それ以上に、皆さんに考えるきっかけや、種みたいなものが増えることに役立てばと思っています。

それでは、「メディア進化論」というテーマで、進めて行きたいと思います。

ダーウィンの進化論って、強いものが生き残るのではなくて、変化に適応したもの、個体が生き残るというような、すごい、割りきりのもとに説明をするのですが、生物における成長と進化の言葉の意味合いは、違うものと理解されているかと思います。で、これが、今日の話のテーマにある、メディアにおける成長と進化に置き換えて、どのような視点が持てるのか、今日はお話出来ればと思います。

メディアにおける進化と言われた時に、どういう事を思い浮かべるか、メディアにおける成長と言われた時に、どういう事だと考えるかと言う事を、一度皆さんの頭の中で、揉んで頂ければなと思います。
生物における成長は体が大きくなったり、行動自体が成長したりと、基本的な生物の構造における成長です。
成長という観点、進化という観点から考えると、生物は皆等しく、生まれて大きくなって、徐々に老いていって、必ず死にますが、後に出てくる、プロダクトサイクルにもあるように、成長には、衰退と死が、紐ついてまわります。ただし、生物は、1個体ではなく、人間という単位で見たら、世代が変わっても生き続けていく。これはたぶん、そこに進化というものが紐ついていて、進化はその生物の形自体を変えていきます。僕には水かきが無いですけれども、海の中でずっと生活していたら、僕が海の中で早く動くために、水かきが出来るかもしれない。個体の形さえ変える形で、進化は進んでいきます。

じゃあ、メディアにおける成長って何?と考えると、まずは、利用者数、ユニークユーザー、後はアクセス数、ページビュー数、そういった物量的な指標が成長なんじゃないかと思っています。
インターネットのメディアとなりますと、最初は誰も知らない。そこへ、どんどんあのページは面白いよねという形で、ユーザーが増えていく、それは今、メディアにおける成長の一つかなと思います。もう一つは取扱いコンテンツ、情報の拡大というものも一つの成長だと思っています。例えば、食べログやぐるナビさん、お店の数が最初、5件とか10件だったら、それってあんまり価値を持たないですよね。これがどんどん同じフォーマットでも良いから、店舗数が増えていくと、これは、メディアにおける成長という観点でとらえてもよいと思います。

一方、進化をどう解釈するかというと、新しい媒体やプラグが誕生して、これらが、人々の新しいコミュニケーションの手法を作っていく。これが進化かなと思っています。そして、人々の行動とか、考え方とか、規範とか、そういったものを変えるようなものが、メディアにおける進化と、僕は捉えています。
具体的にいうと、インターネットというメディアが出てきて、皆さんの生活は劇的に変わったのではないかと思います。例えば、グーグルが浸透してきて、情報へのアクセスの仕方というのが、確実に変わりましたよね。インターネットが拡大してきた理由の一つかもしれない、匿名性という環の中に、フェイスブックというのは、実名であるという環を作りました。この実名性があるから発生しうるコミュニケーションというのが、出てきています。インターネットは、メディアにおけるフィールドでは進化と、僕は捉えています。また、グーグルが出てきたというのは、情報を取得するという形でみると進化。フェイスブックが出てきたことを考えると、今まで匿名の中で、コミュニケーションしてきた側としては、何か怖くて、本当にそいつかと分からずコミュニケーションしてきたところから、ちゃんと実名ということになって、違う形のコミュニケーションが発生してきている。こういったことは、進化ということに紐付くのではないかなと思っています。

先ほどお話した、プロダクトライフサイクルやバイオリン曲線などについては、あまり、見聞きしない言葉かと思いますが、PLC=プロダクトライフサイクルって、商品が開発され、世の中に出て、浸透し、売上利益を上げ、また他のものに食われ衰退していくという、人間の成長と同じような形で表したものが、PLCという理論ですね。
一方、バイオリン曲線については、ある商圏にお店が一軒できました。で、そのお店があることによって、そこでお買いものをする人たちが出てきます。商圏というものが生まれる。商圏が出てくるとそこに、その商圏に集まる人たちにモノを買ってもらおうと、また別の人が入ってきます。で、一番初めに商圏を作ったお店あるいは、企業も含めて、それぞれが、永続的に成長しなければならないというミッションを持っているので、どんどん売り上げを、今日より明日、明日より明後日と、売上を伸ばしていかなければならない。これは、企業経営でも、メディア会社の経営でも同様です。来年度の売上目標を90%とする会社はないですよね。たぶん、がんばって110%とか、成長市場だったら140%増やそうだとか考えて設定します。基本的に、企業は永続的に成長するというのが、ミッションとして与えられています。
例えば、その商圏にお店が一軒できました。そのお店は、来店客にいろんなものを買ってもらわないといけないので、どんどん、品揃えを増やしていきます。デパート化していくわけです。デパート化して行けばいくほど、その商圏は、強く魅力的になっていくので、売上は上がっていきますが、やがて、そこに第三者が入ってきます。このカテゴリーキラーと呼ばれる商品群だったら、あっちの方が絶対に安いけど、この商品群であれば、こっちの方が、品揃えが豊富だというふうに、絶対的な競争優位の店舗が出てきます。そうすると、これまでの顧客が、別の店に流れていきますね。でも、そのカテゴリーキラーも永続的に成長しなければならないという意志を持っているので、最初の内は、良かったんだけれども、その内、おかしい、なんでや、とか言って、デパート化していく。またそこに、第三者のカテゴリーキラーが入ってくる。こういう現象が、バイオリン曲線という理論になるのですが、こういった、トラディショナルなマーケティングの考え方、手法というのが、僕らが、今扱っているインターネットをはじめとする新しいメディアに於いてもあてはまるかどうか、よくよく考えるテーマであったりします。

ここから先は、「過去を紐とき、未来を創造しよう」という話をします。

もうちょっとここで、視点を変えてお話をします。先程、成長と進化が違うという話をしましたが、広告業界でのお金を例にして考えると、テレビのGRP視聴率とその視聴率で、お金をもらいますね。インターネットのメディアに関しても、アクセス数やPV数、これだけの人が見に来ているから、これだけのお金を下さいということになります。イコール、メディアが成長すれば成長するほど、売上が増え、お金が入る可能性が存在しうると。お金の持つ特性で、これは成長です。
ただし、お金は成長しますが、たとえ進化したとしても、お金は、その瞬間は稼げないです。まあ、稼がないという方が確かですね。じゃ、進化って必要ないのかといわれると、調子が良い時は要らないです、進化って。そのメディアがすごい活況で、何も気にしなくも、勝手に売れていくという時って、進化するということが、たぶん頭の中にはありません。
進化したプロダクト、領域、メディアがあったとしても、その進化したばかりのメディアはとても弱いです。インターネットの立ちあがった直後は、メディアとしての価値はゼロです。はっきり言って、売上なんて上がらない。それが多くの人が使い始めて、ようやくメディアとして注目され、価値があると言われて、お金がでてくる。そういう意味でいうと、進化した直後のメディアもしくはサーズというのはとても弱い。ただし、進化はイノベーションという言葉に置き換えられると思っていて、電通には、Good Innovationという標語がありまして、良いイノベーションを起こしましょうというということだと理解しています。
イノベーションについて、今、市場を席巻しているものに、破壊的イノベーションという言葉があります。破壊的イノベーションって、具体的なものをイメージしてもらうと分かりやすいのですが、例えばリクルートさんのフリーペーパーは破壊的イノベーションとして、活かされているものですよね。雑誌というのは本来、有料で販売されていた。コンテンツを売るのに有料で販売していた。これはユーザーからすれば、お金を払わないと情報を取得できない。そこを完全なる無料として、多くの人に届けるので、広告価値が上がりますね。無料のフリーペーパーとして情報を吐き出されると、都合の悪い立場になる人が絶対いるわけです。有料で同じ情報を収集している人は、無料で同じ情報が出ているのなら、そっちに流れますよね。これは、イノベーション、進化を起こしているのだけれども、市場の単位としては誰かのことを、ごっそり奪っているようなイノベーション。これを破壊的イノベーションといいます。最近だと、音楽配信とかでも、破壊的イノベーションで、アップルとかがやっているiTunesとかも破壊的イノベーションという言われ方をします。
実は、すごく難しいなと思うのは、破壊的イノベーションは、今、利権を持っている、メディアとして大きい、競争優位というビジネスモデルを確立している会社の内部からはとても生まれにくいのです。例えば、電通は、テレビを毀損するような破壊的イノベーションを、自ら出すことはすごく難しい。ただし、成長している領域の人からすると、現状のままでいいんだけれども、周辺にいる人からすると、そこを破壊的イノベーションで取り込みたいと思うわけです。

これはビジネス視点なのですが、期待値として、1を超えるかどうかを良く考えます。期待値と確率論とそれに対しての計算式で出てきますけど、期待値が1を超えるというのは、自分が100円かけたら、100円以上で帰ってくるものを、1を超えるといいますよね。例えば、パチンコにいくらお金を使っても、確率論からすると、絶対に勝てないですね。なぜかと言えば、期待値が1を上回らないからです。ただ、ホールの人が情報を持ってなくて、圧倒的に自分達の方が情報を持っているという環境下でなら、期待値は1を超えますが。
新しい変化が生み出された、出来たと思ったら、これが期待値1を超えて、ここにカロリーさえかけていけば、成長するのか。メディアとしてのPVが、ガーっと上がっていくのか。例えば、すごく特殊な言語で書かれているWEBページがあるとします。それは、世界中の人100人にしか読めない。で、そのメディアが立ち上がりました。1人ユーザー来てくれると、500円くらい落としてくれるメディアでした。これって期待値1超えるやん。1人当り、200円のところを500円稼いでくれる。でも、ここのメディアの成長の限界は、言葉として理解できる100人が限界ですよね。期待値は1を超えるけれども、最大限の客数が決まっているケース。この場合は、カロリーを掛けたおしても、一定の程度までしか上がらない。でも、多くのメディアは勝ちのルールさえ見つければ、カロリーをガンガン掛けていく、そして、どんどん収益が上がります。メディアとして成長します。従って、ベンチャーキャピタルは、新しいメディアとか新しいサービスに対して、今はまだ売上が上がっていないのに、お金付けるでしょ。ああいうのは、そのお金を使って、そのメディアやサービスさえ大きくなれば、確実に利益が返ってくるモデルがあるからという考えに基づいて、お金を投資するわけですね。
これで、メディアの成長と進化という言葉の違いや、考え方の違いを、お伝え出来たかなと思います。

では、今後の進化というのが、どこで起きてくるのか、どうしたら判断出来るのか、その為には、 僕は、「過去が理解出来ていれば、未来は予測しやすい。」と思います。

1995年3月はYahoo!が設立されています。3年後の98年、実は、もうこのタイミングでグーグルはできています。また一方、2004年にはフェイスブックができている。2004年の8月にグーグルが影響してきて、それをベースにしたお金で、YouTubeが立ち上がっている。YouTubeが、約2、600億円で買収されましたが、立ち上がって1年たらずで、この金額で評価され、売られているということで、過去のメディアの成長とか、過去のメディアのスピードを考えると、ありえないぐらいのスピードで、極端に成長するのが、今という時代なのかなと思います。2011年には、ようやくグーグルがグーグルプラスというものをローンチしています。グーグルプラスはフェイスブックに比べて、しょぼいかと言われると、しょぼくはないと思いますが、ここにいらっしゃる方で、フェイスブックは8割~9割やっていても、グーグルプラスを、すごく使っていますという人は何人いるでしょうか。グーグルプラス、AKBもソーシャルネットワークでないですかと言う人がいますけれども、やはり同じ機能のものを出したとしても、グーグルプラスは後発です。ファーストムーバーである、フェイスブックは圧倒的に強い、なので、進化を起こそうとすると、ファーストムーバーであるということは、絶対的な条件だと思っています。
また、各メディアさんがやっている、いろんなサービスには、何かしら理由があると思っています。グーグルは、インターネットに多くの情報を乗せたかった。今でもそうです。フェイスブックは、オープンにユーザー情報を参照させるわけです。Yahoo!は取りとめもなく、あらゆることをする。たぶんこういった行為、ひとつひとつにも、背景を見ると、何かしらの狙いがあります。

次に、グーグルの話をします。
情報量によって、適切なナビゲーションは、変わりますよね。情報が10個以下、5個か7個しかない時って、どういうナビゲーションがその情報を把握しやすいですか。1000個になった時って、どういう情報のナビゲーションが使えると把握しやすいですか、一億とか百億となるとどうですか。つまり、それぞれに適切なナビゲーションは違います。10個未満の時は、一覧性でいいのです。その情報がザーっと並んでいても、そこに何が書いてあるか、どういう情報かということを把握できますね。
新聞の紙面には、インデックスがあって、そこに重要な情報がまとまっていますが、新聞の紙面に同じ文字数で1000個情報が並んでいて、理解できますか?絶対できないですよね。情報が増えれば増えるほど、整理の仕方が必要になってきて、一覧性の次は、カテゴライズという世界があります。同質の情報をまとめて、グルーピング化する、カテゴライズ化する、そうすると情報として使いやすくなります。
但し、今のインターネットのように、これが1億や5億といった数字になると、カテゴライズできますかといったら、できないですよね。その時に、何が有効になってくるかというと、検索という行為が出てきます。自分が探したいキーワードで文字を投げ込むと、それに該当する情報が返ってくる。それでも、検索が最良かというと、そうでもなくて、情報が10個以下の時、文字打って必要な情報に当たりますか。当たらないですね。従って、情報量によって、適切なナビゲーションは違ってきます。グーグルが、主戦場でパワーナミナンスしていたのは、これですね、検索。なので、グーグルにとっては、インターネット上に大量な情報が増えていくことが、自分達の企業価値を最大化する。どんどん永続的に成長するための源泉なのだと思います。グーグルは、インターネット上にポンと情報を出してもいいし、地図情報でもいいし、どんどん情報量を上げていってもいいわけです。そこで、ソーシャルメディアに話を進めると、みなさん、パソコンの前に座って、フリーズしませんか。僕も、よく検索ボックスをみて、フリーズすることばを使っていたのですけれども、検索ボックスって、自分が何を調べたいのかがないわけです。探している環境にあるけれども、探すものが分からない。そこで、出てきたのがソーシャルメディアという形で、インターネットという能動性がある中に、受動的にメディア取得ができる。かつ、その時の優先順位やスクリーニングが自分の友達が興味を持ったもの、というかたちでスクリーニングされて、その情報をトリガーにして、情報を照合していくという新しいかたちの流れ。たぶんこれが、ソーシャルメディアが生まれてきて、今この時点で、影響を発揮した理由です。


少しメディアの影響力に関してお話をします。人々の行動に大きな影響を与えるのはテレビだけなのでしょうか。インターネットでも、普通に気になることはありませんか?例えば、テレビの報道では出ないものでも、インターネット上で出ていて、それを見た人たちは知っているわけです。インターネットは、メディアとしての影響力は確実にあるのです。でも、何で、検索と言う言葉に紐ついたときに、テレビは検索に影響を与える、インターネットは検索に影響を与えないと言わないのでしょう。テレビを見ていて気になった情報があった時に、テレビって、そこで遮断されているから、その情報を取りにいこうとすると、他のメディアの方に、情報を紐つけるという作業が必要なのです。これはインターネットの中だったら、興味のある話題なら、たぶん、その中にリンクがあるのです。バーっと触るだけで、入れるわけですね。インターネットの広告でも、バーっと15秒とか30秒の広告とかフラッシュで流れるじゃないですか、そこで興味を持ちました。じゃ、それをクリックしたらもっと商品の詳細情報に、飛んでいくわけです。インターネットの世界ではリンクが存在しているから、気になった情報をそのまま取りにいける。これはすごく当り前の話なのです。でも、テレビの世界は、そこにリンクがないでしょ。自分が媒介になって、検索という行為をせざるをえない。だから検索にいっている。

では、次に、〔第3講〕講師の内田さんから指摘のあった「メディアプランニングは誰の視点で」について考えましょう。〔第1講〕講師の永富さんからは、メディアプランニングについてお話がありました。クライアント視点に立った時に、どういうメディアをチョイスするのかという考え方ですよね。でも、実は、広告の世界って、お見合いなんですよ。媒体側からすると、NGな業種、業態というのもあるんですね。グーグルは、一応、媒体に対して、武器とかアダルトはダメですよと規制します。このように、基本的に本来、メディアとクライアントはお見合いです。メディア側から立った時のクライアントプランニングというような視点で考えると、ターゲッティングですね。特定の記事には特定の広告主をはめた方が良い。例えば、スポーツでサッカーの話題をやっている面には、アディダスさんのスパイクの広告を載せるページだというような。一番代表的なのが、検索メドワード広告って、キーワードに基づいて、それに関係する広告を統一させる。というのが基本的な考え方です。以前は、消費者金融をあてとけばよかった時代がありました。僕が、インターネットのサイトを運営している経営者だとすると、消費者金融の広告を出しておけば、絶対に儲かったということがあります。そうすると、何が起こるかというと、そこに来ているユーザーが、これ広告やと瞬間に分かって、意識の外にいってしまう。最初はそこで、あっ消費者金融の広告があって、お金を借りるのかと、広告としての価値を感じてくれたのですが、徐々に、広告としての価値を持たなくなる。それはダメだということで、メディアから、特定しますみたいな。より、記事とか情報に合う広告主を載せるべきだと言う形で、インターネットはそういうことになっていきます。
でも、これも本当は正しいかどうかというのは、微妙だと思っていて、さっき言ったように、サッカーの情報・コンテンツの横にスポーツの広告を並べて置く。これは、すごくまっとうな気がします。
ですが、未知の可能性をメディア側が捨ててしまっているとは言えないでしょうか。実は、先程の消費者金融みたいな、第二、第三の消費者金融があって、ローテーションさせていけば、そっちの方が、効果が上がるかもしれない。なので、ちょっと変な答えなのですが、グーグルの検索結果ページって、やはり何パーセントかはイレギュラーなもの挟んでいるとされています。その人は、何々と調べているのだけれども、ちょっと違うのが返ってきます。それによって、この人はこの言葉で検索しているけれども、本来、そういうことじゃなかったという発見もあるし、違う情報、ちょっと揺らぎのある広告情報を当てることによって、未知の可能性を探るというのもあります。
メディア側からするクライアントプランニングっていう視点は、実は、僕ら代理店の人間は、クライアントさんに向き合う人間と、メディアさんに向き合う側の人間とで、中で分かれています。代理店業やメディアを運営する人達の視点から、クライアントプランニングをすることは、たいへん重要だと思います。

先程、お話したように、過去が分かれば、未来も見えるじゃないかとか、その上で、今、ソーシャルメディアが、そういうポジションでこうなる、こう移っていくよねとか、そこに関して線を引いて、みんなそう言っているけど、それって本当?みたいな、こういうように自分の頭の中で、キャッチボールするだけでも、ビジネスの芽ってすごく一杯あると思っています。それが、たとえ、自分の事業を毀損してしまうイノベーションであったとしても、第三者に起こされてしまうのであれば、自分の中で破壊的イノベーションを内在できるようなビジネススキーム、会社の立て方とか、実は、それが今、すごく重要な問題になっています。

僕が、メディアの成長と進化について思うことを、いろいろな視点から、お話をさせて頂きました。皆さんにとって、様々に考えて頂く機会になれば幸いです。

 

第3講 内田しんじ 氏(うちだ・しんじ)(15:45~17:00)
「MASS VS SNS」

私の好きなクリエイターに、イギリス人のトレバー・ビーティーというプレイステーションを担当していたクリエイティブ・ディレクターと、もう1人、「Think Simply」の著者でアップルのほとんどの仕事を手掛けたケン・シーガルというコピーライターがいます。
この2人に私はすごくシンパシーを感じています。なぜかというと、共通項を見つけたからです。2人ともすごくシャイです。なので、自分も人前で流暢に喋れなくてもいいんだ、と勝手に決めつけております。きっと上手くお伝えできない部分が多々あり、ご迷惑をお掛けするかと思いますが、しばらくの間お付き合いをお願いします。

本日のタイトルは、これです。「MASS」と「SNS」の間に「VS」を挟んでいるのですが、別に勝敗とかシロクロを付けるつもりはなく、2ヵ月前に『まず、講演のタイトルを決めてください。』と依頼されたので、早々に付けさせていただいたものです。なので、本日は、マスメディアやソーシャルメディア、そしてその中身やコンテンツとの関係性についてお話させていただきます。主観と独断であり、何のデータやエビデンスもありませんが…。

私はDY&Rに10年、TBWAに5年、そして8年前から電通です。現在、クリテーティブ局とアカウント・マネジメント局を兼務しています。後者は、電通の13番目の営業局で、略して“AM”局と呼んでいるのですが、午前中だけ!? みたいなことをよく言われています(会場笑)。日夜、働いているAM局は、Hondaさんのコミュニケーション領域を軸にしながら、真のビジネスパートナーを目指しています。Hondaさんは、2輪・4輪・汎用事業、ASIMOやジェット機も作られていますが、我々が担当しているのは、国内の4輪事業です。日々のコミュニケーションについては、今年度クリエイター・オブ・ザ・イヤーを受賞された伊藤公一さんがECDで、私がSCDで、2人で見させていただいています。伊藤さんとよく、『Hondaブランドを何とかしなきゃ、もっと強くしたいねぇ…』というようなことを話しています。2人とも基本は4マスで育ってきたクリエイターなので、なんかソーシャルやらねば…という危機感というか、そうしないと自分たちも、Hondaさんも何となく置いていかれるような気がしていました。

そこで、単に商品CMだけでなくて、アクションのコンテンツ化、つまり企業が行動を起こして、それをコンテンツ化したものを、SNSでもいいし、CMとしてオンエアしてもいいだろう、と考えました。アクションをそのままコンテンツ化したものとして、少し前の事例ですが、ケータイ電話に風船をくっつけて宇宙まで飛ばした実験で準備段階から打ち上げ、着水までのすべてのプロセスをWEBにあげたとか、新改装の東京駅に3Dマッピングした映像をUSTREAMで中継したとか…。そんなコンテンツを横目に見ながら、ソーシャルに相応しいアクションを模索していました。
もう2年前になりますが、Hondaの技術を結集して「ミニ4駆」を作ったらどうだろう!というプロジェクトを企画しました。(サンプル画像紹介) ほら、意外といいデキですよね。F1復帰宣言の前だったので、ミニ4駆グランプリに参戦!というニュースは話題になるぞ、ということで、こんなビデオまで作りました。(サンプル映像紹介)これで、意気揚々と提案したところ、クライアントの方に『なんか違うよね…』とあっさり出鼻を挫かれ、この企画は実現しませんでした…。ただ、素直に反省もしなかった。『もしかしたら企画=コンテンツが悪いのではなくて、メディア選びが悪かったのではないか…』よくある、クリエイティブを悪者にしないための根拠の無いポジティブ思考ですね。動機は曖昧でしたが、このプレゼンを機に、コンテンツとメディアの相性や関係性を「根本」から考えてみよう、というきっかけになりました。

まずコンテンツですが、人間には「2大伝えたいモノ」がある、と睨んでいます。
1つは火や石器が代表例。人はこうした物とか道具を手に入れると、それを別の人に伝えたがります。もう1つは頭の中にあるもの、ココロです。感情とか考え、形の無いものです。これも、人は人に伝えたいと思います。これが、2大伝えたいモノ。そして、それぞれのコンテンツがどういう形で拡がるかというと、石器の発展形として、武器になったり、製品になったり。感情や考えは、思想や宗教や芸術として形を成していく。これ以降、メディアが絡んできます。製品=プロダクトは企業活動や団体活動を主体に。それに対して思想や芸術は個人活動が軸となって拡がっていく。さらに、前者が宣伝や広告、後者が説教や路上ライブ、といった形で波及していくのではないかと思われます。その結果、見たか見なかったか、拍手かブーイングか、シビアな評価が下されることになる。前者がマスメディアに近く、後者がソーシャルメディアに近い、とも解釈できます。
サマリーすると、物はマスメディアで情報として伝わる。考えはソーシャルメディアで感情的に伝わる。人間の2大伝えたいモノ=コンテンツは、それぞれに適したメディアを有している、とざっくり考察できるのではないでしょうか。

メディアについて、もう少し考えてみます。マスメディアではなく、ソーシャルメディアの方ですが、その性格は全然ソーシャルではなくて、むしろパーソナルではないでしょうか。ネーミングのせい? ソーシャルメディアというネーミングが、パブリック=公的とか“みんな”とか社会を相手にしているようで、マスな存在に思えて量が多そうに見える。個人的でパーソナルに見え難いのは、ネーミングによる思い込みもあると思います。ちょっと脱線しますが、「アベノミクス」もそうだと思います。今年の流行語大賞は、これかなと思っています。ネーミングの怖さは、何かそこにあるように現実に存在するように、誤解とまでは言いませんが、そういう実感が伴うようです。ソーシャルメディアとネーミングした瞬間、非常にオープンで一気に広がるイメージが付くのですが、実は、真逆。とてもパーソナルで、個人や個性を尊重するのが基本姿勢であり、その実態だと思います。

脱線ついでに、いきなり中世の話になりますが…。カソリックが支配する世界で、日々の行動や思想がギューと圧迫・統制された社会があったと思います。そんな中から生まれてきたものの1つが、いわゆるルネサンス。人間復興であり、人間性を取り戻すこと、個人の主張を持ってもいいのではないか、という気持ちの現れですね。それから約500年。企業支配というか、経済のことだと思ってください。経済が壊れると地球も壊れるという、経済によってワンワールドになった現代社会。こうして1つにまとめられることによる反動で、個人回帰という動きが再び起こっているのではないか、そのことが、SNSの登場に無関係ではないとも思っています。つまり、教会支配からルネサンスが生まれたように、企業=経済支配から個人が発言するメディアが発生したということですね。経済というのは、リヴァイアサン=怪獣のような存在だと思います。そいつが支配する巨大なワンワールドから抜け出して、自分と仲間たちだけが共有できる価値を持つこと。これが人間らしさ、個人を尊重する時代の本質かもしれない。さらに、もはや大きさや強さが勝ち組の基準ではなくて、良いことや正義に向かおうとする兆しがあちこちで出てきていることも見逃すわけにはいかない。もしかするとSNSの登場は、我々にとって第2のルネサンスを体験しているのではないか。ちょっと大袈裟ですが、それくらいすごい変化の時代にいるのではないかなと、私は感じています。

ソーシャルメディアの性格をさらに掘り下げます。そもそもSNSというのは、画家のカンバスとか音楽家の五線譜と同じように、表現を主張する場だと思います。くどいようですが、SNSは伝達メディアではなくて、表現メディアです。先ほどソーシャルメディアの「ソーシャル」というネーミングの魔力をお伝えしたのと同じように、「メディア」の部分にも、自動的に拡がる、という思い込みが含まれています。実は全くそうではなくて、SNSは「伝達スイッチが付いた表現メディア」であると、私は理解しています。

ところが、『FacebookとかYouTubeでどんどん拡げて!』『10万ビューはイクでしょ。』『バイラルムービーを作って。』と、未だに耳にすることがあります。
特に「バイラルムービー」という言葉に引っかかります。その原因ともいえる逸話がありまして…。それは、カヌーイスト・野田知佑さんの犬の話。名前は「ガク」。非常にバランス感覚がよく、いつもご主人と一緒にカヌーに乗っていました。落ちもせず酔いもせず、ぴったり付き添うこのパートナーを「カヌー犬」と名付けたら、この話が伝わって、「カヌー犬ください」と、ペットショップに列ができたとか。カヌーに乗れた犬をカヌー犬と呼んだように、拡がったムービーをバイラルムービーと呼ぶべきですね。結果論であり、最初からバイラルムービーは存在しないのです。ちなみにバイラルとは、ウィルスとか感染するという意味。とはいえ、ムービーのオファーをいただいたときには、いつも頭の中にカヌー犬の姿が浮かびつつも、「はい、つくれます。」と返事をしてしまいます。そう言ったからには、どうしたらリツイートしたくなるような表現になるのか、「いいね!」を押してもらえるコンテンツってなんだろう、と、また自問自答するわけですね。

そこで、表現の中身について考えましょう。まず、伝達メディアの代表であるCMの場合、中身は、なんと10本中8本がタレントCMです。この事実は、送り手や作り手の意思だけではなく、タレントを見たいという受け手のインサイトも働いていると思います。とにかくこの状況が、伝達メディアの現状です。ならば、同じようにタレントを表現メディアにも持ち込んだらどうなるか? (「炎上もしくは閉鎖」のテロップ紹介) だいたいは、こういう残念な結果に。なぜか? 有名人といえども、SNSに載った瞬間に「個人化」するからです。SNSは、タレントや有名人、社長とだって、いつでも1対1で話せる場所として認識されているからです。タレントはタレントとしてではなくて、表現者として一個人として評価され、ツッコミどころ満載の状態に直面しているのです。そんな状況下で、ポツリと出たホンネ、勇気あるひと言、そのことに対してたくさんの人が反射的に反応する。結果的に、炎上や閉鎖に追い込まれるのですが、この「勇気あるホンネ」には、人びとを動かすパワーや拡散の可能性が秘められていると考えられませんか。ご当人の気持ちはさておき、多くの友人やフォロワーを抱えての「勇気あるホンネ」は、拡散する可能性を秘めたコンテンツではないでしょうか。
表現の中身として、もう1つ。拡散するコンテンツの特長を探ってみます。(ネコが両手を動かす映像を紹介)どうですか? 文句なくカワイイ。ノンバーバルで突破力あるコンテンツですね。これこそ、圧倒的なエンターテイメントだと思います。他愛もなく、造作もなく、カワイイというピンポイントに集中する強さ。先ほどの「勇気あるホンネ」とは全く別の視線ですが、SNSでの拡散を期待するには、「圧倒的なエンターテイメント」も大いにポテンシャルを発揮するのではないか、と思っています。

さらに、この圧倒的なエンターテイメントについて話を進めます。これって、プロダクトを使って表現できるのでしょうか。ペットショップの場合は、ネコがプロダクト=商品ですから、最後に○×ペットショップへどうぞ!とやれば、拡散する可能性があるかもしれません。果たしてネコ以外のプロダクトで圧倒的な娯楽はつくれるのか。実際にそんなコンテンツは存在するのか。ということを、伝達メディア代表=CMでのエンターテイメントの例と、表現メディア代表=WEBムービーでのエンターテイメントの例を見比べてみたいと思います。2つの例をご覧くだい。(映像紹介)
最初がアップルのCMで、最初にご紹介したケン・シーガルの作品です。オプティアカル・マウスの動きをドライビングフィールに見立てたエンターテイメントですね。続いてWEBムービーにアップル製品が登場した例。あるミキサーの性能のすごさをアピールするために、金属製のアップル製品を粉々にするというデモンストレーションです。ガチでここまでやるのか!とニガ笑いの賛辞を込めて共有したくなるような映像だと思います。 
2つ目はフリスクです。10年程前に私がつくったCMと最近WEBで出会ったムービーです。CMでは投げた紙くずが偶然ゴミ箱に入るというオチですが、WEBでは投げた紙くずを自動で受け取るゴミ箱をオリジナルで作ったというストーリーです。予想外のエンターテイメントで、やっぱり拡散したくなりますね。
この2例からもわかる通り、伝達メディアではプロダクトの属性や特長が「程々の娯楽」として描かれる一方、表現メディアでは予定調和ではない「圧倒的な娯楽」が提供されています。この傾向を「表現の中身とメディアの親和性」の一例として見ることができるかもしれません。いずれにしても、コンテンツとメディアには密接な関係性がある、メディアに相応しいコンテンツ、コンテンツに相応しいメディアが歴然と存在するのではないか、と考察できました。さて、これが、本日の結論。「MASS」と「SNS」の違いです。と、今まさにそう申し上げたいのですが…、その上、こんなに時間を使った後で誠に言い難いのですが、実は、ここからが本題、本当にお話したいことです。

質問です。ここに、AとBがあります。(離れたAとBの画像紹介) みなさん、1本の線を引いてください。どこに引きますか? 分ける線(AとBの間に縦線を引いた画像)と、くっつける線(AとBを横線で繋げた画像)の2通りありますね。英語で言うと、divideかseamlessか。私は、本能的にくっつけたくなります。くっつけるという意味では、combine=結合する、混ぜ合わせるという単語もありますが、そもそもシームレスにはつなぎ目がわからないようにつなぐという意味があり、1本線で繋げるイメージとぴったりなので、この言葉を使わせてください。「シームレス」という言葉が、今後のキーワードになります。
前述で、メディア特性に合ったコンテンツがあること、マスメディアあるいはソーシャルメディアに相応しいコンテンツの特性も考察しました。それはまさに、ディバイド=分ける行為。で早速、ここにシームレス=繋げる考えを導入すると、どのメディアにも合うコンテンツ、メディアを問わずに共有できるコンテンツとは何か、となるわけです。そういうものがあるなら、ぜひ作りたい!と思ってしまいます。

そのためには、まずコンベンションを壊すべきです。コンベンションとは、定型、お決まりごと、壁や常識と言い直せるかもしれません。ある見方をすれば、専門意識がコンベンションと言えるでしょう。科学、文学、芸術、企業、そして広告、それぞれの分野での専門意識というのが、コンベンショナルな世界をつくっていると言えます。専門意識というのをもう少し砕いてみると、区別する、差別する、壁をつくる、階級づくり、クラス分け、AとBを分けたい=ディバイドの意識が、その中に潜んでいるのです。言い変えると、縄張りであり、テリトリーですね。まず、この縄張り意識を壊そうと努力すること。そういうシームレスな考えや行動にこそ、インベント=発明だとか、イノベーション=革新やパワーの源泉になるのではないかなと思います。

では、シームレスな行為とは何か。広告とかコミュニケーションの話とは少し離れてしまいますが、世の中にあるシームレスな例を見てみましょう。(次々に画像で紹介)

1つ目の例なのですが、「落水荘」ってご存知ですか?フランク・ロイド・ライトがピッツバーグに造った別荘です。家の中に滝を取り込んでいる建物です。もう1つ同じような建築物が、これ。メキシコの建築家ルイス・バラガンが造った家で、リビングにプールがある。先ほどの落水荘と同じで、どこまでが外でどこからが内かをはっきりさせない。つまり屋外と屋内、外と内をシームレスに繋いでいる例として取り上げてみました。
次は「進撃の巨人」です。これは、すごいです、ストーリー展開が。私の子供時代には、ヒーローがワルモノをやっつける。最初はワルモノが強くて、ヒーローが特訓して、最後に勝つ、というのがお決まりでした。この原作は読破していませんが、TVアニメで見始めて5話目くらいに衝撃的なことが起こりました。ちょっとネタバレですが、主人公が敵か味方かわからなくなってしまいます。周りも困ってしまい、こいつは殺した方がいいのか、生かして利用した方がいいのか…。敵と味方がシームレスに繋がっていて、これはすごく魅力的な存在だなぁ、と思いました。やや強引なところもありますが。
次の例は、モビリティです。モビリティは、A地点とB地点をシームレスにつなぐものですね。Hondaさんはバイクもクルマもジェット機も作っています。A地点からB地点まで行くそのシームレス行為が、移動の喜びと言っていいでしょう。
またA地点からB地点への移動の喜びは、デジタル上にも存在するという例。グーグル・アースやストリート・ビューです。これらを初めて体験した時に、どこまでも繋がっていて、スルスルと行けちゃう感覚に心地よいシームレスさを感じました。だから、ポンと跳んでしまう「どこでもドア」はダメで、やっぱり繋がっているモノ、かなり個人的なセンスですが、そういうものにシームレスの魅力を感じてしまいます。
さてこれは、フランシス・ベーコンが描いた画です。物理的なA地点とB地点ではなく、頭の中にある2地点を繋げようとしたものです。彼の発言に驚いたのですが、『僕は、あっち側とこっち側、あの世とこの世、男と女、あらゆるものをくっつけて表現したかった。』と言っています。この画のどこがあっち側でこっち側なのかよく分からないのですが、頭の中にある2点をシームレスにくっつけようとして、努力した人がいたのだなと感心したというか、感動しました。キュビズムも、その1つだと思います。正面だけでなく、横も後ろも一緒に見えていいだろう、ということですね。物理的には無理でも、心や頭の中にあるA地点B地点を強引にくっつけて表現したシームレスな手法だと言えます。
人物の例は、ダ・ヴィンチです。彼は、絵画、彫刻、建築、音楽、科学、数学、解剖学、地学、植物学、有体力学、あらゆる学問に精通していて「万能の父」と呼ばれています。実は彼の中では好奇心でシームレスにつながっていたのではないかと思います。例えば、絵を描いていると骨格が気になる。すると、骨格は解剖をしてみないと分からない。こんな構造なのかと、構造に興味を持てば、今度は戦車やヘリコプターの構造を考える。さらに国の構造まで。晩年、フランス王に治水の依頼を受けた際には、有体力学も応用している。多面的な人物に見えますが、内面には多様でシームレスな知識を有しており、それが彼の魅力ではなかったかと想像します。
この画のタイトルは、「キャンベルスープ」。アンディ・ウォーホルの作品です。彼は板画やカンバスという1点もの、いわゆるタブローに対し、リトグラフやポスターでマスプロダクツのようにアートを量産しました。シニカルで前衛的ですね。普段、キッチンにあるものを大きく見せれば、アートになる。アートとデザインが一本の線で繋がったように境目が無くなり、どちらを有難がって良いかわからない感覚を引き起こす。私は、そういうところが魅力的に見えたのではないかなと思います。
もう一つ。このアートは、山口晃さん作です。東京の六本木ヒルズを描いているのですが、表現の仕方が大和絵や浮世絵、襖絵や屏風画的なので、パッと見た時に江戸と東京が繋がったような印象を受けます。これもシームレス。過去と現代が繫がってクラクラとするので、アリかなと思いました。
次にモノの例。iPhoneをお持ちの方は、何にお使いですか? もちろん電話ですが、ゲーム機として使う場合もあるし、モバイルPCとしても使う。1つの目的に1個体が対応するディバイスではなく、1つのインターフェイスの中で多くの機能がシームレスに繋がっている例ではないかと思います。
デジタルといえば、MITメディアラボ。マサチューセッツ工科大学、建築計画スクール内にある研究所で、日本人の伊藤さんという方が所長をされており、’95年から石井さんという方が参加されているプロジェクトがあります。ここでは、芸術と工学をくっつけようとか、人間とコンピューターをシームレスに繋げることが考えられています。
最後に映画の例です。今日は写真学校の学生の方も参加されていると聞きましたので、映画の中のワンカットに注目してみます。映画というのは何がすごいかというと、場面と時間を切り刻めるところです。当り前なのですが、舞台やミュージカルでは時間は前にしか進みません。しかし映画の場合は、エディティングとかモンタージュという手法で、時間が自由に切れて自由に繋げます。なので、映画の中に時間なりに繋がったワンカットが入ると、かえって違和感が出て印象深くなる。そんな例をいくつかあげましょう。まず、『チャイナタウン』のエンディング。闇社会と人々の関係が、結局は時間の経過でしか解決できないという切なさが、最後のワンカットで描かれていて、そのシームレスな時間の過ぎ方が非常に効果的だと思いました。『フルメタル・ジャケット』は、キューブリック作品ですね。その中に歩兵をステディカムで併走して撮ったワンカットがあります。『シャイニング』でも、彼はホテルの廊下やイングリッシュガーデンをステディカムで撮っています。ご存じの通りステディカムは画像が揺れにくいので、映像からもスムーズで時間の流れを素直に感じることができます。これらのシークエンスは、括弧でくくったように際立って見えるのです。最後は、木下惠介さんという監督が撮った『陸軍』というフィルム。いわゆる戦意向上のために作られた国策映画です。ラスト8分くらいに母親が息子の出征を見送るシーンがあります。そのシーンをワンカットで撮っていて、見ていると母親の息子に対する思いがじわりと伝わってきます。これが、当局から「こんな未練がましい別れは、けしからん!」と叱られることに。ワンカットを用いることで、そんな効果が「出てしまった」、否、「出した」のかもしれません。結局、彼は映画会社を辞め、終戦後まで映画を撮ることができなかったのは、有名な話です。シームレスの効果として非常に印象的でしたので、ご紹介させていただきました。

広告の話、コミュニケーションの話に戻さないとまずいので、いくつかの例を。

まずは、プレイステーションです。冒頭でご紹介したトレバーが作ったCMで、私の大好きな作品です。1本目が『Double Life』というタイトル。(映像で紹介)ナレーションでは、暴力に没頭した、不法占拠者たちを殺した、1個中隊を率いた、世界を征服した…、暴力的でネガティブなことを次々に口にしています。どういうことかと言うと、ゲームはバーチャルだからこそ、驚くほどリアルに描く。バーチャルで起こったことを現実にあったかのように話す。あまりのリアルさに「こいつらどうなってんだ」という錯覚を起こすのが狙いだと思います。まさに、リアルとバーチャルをシームレスで繋いだ例です。2本目は、『Mental Wealth』。登場する女の子自身が、リアルとバーチャルを繋げる存在です。CGで作られた彼女が、シームレスそのもの。何だか哲学的なことを話しているようですが、私には全く聞き取れません。向こう側に行くとか、一歩を踏み出す、それが勇気で、そういうマインドを持つことがメンタルウェルスで、それが大事だ、みたいな…。
次は私の仕事で、スーパーニッカウイスキーのCM。(映像で紹介)これは、覚醒と陶酔、白昼夢ですね、こういう世界、少し危ない世界ではあるのですが、まさにウイスキーというのは、覚醒と陶酔の間を行ったり来たり、シームレスで繋いでいるモノではないかなと思って、それをコンセプトにしたアイディアをご紹介しました。
次のコピーは、クルマのヘッドライン。(「Mountainviacity.」他3本をテロップ紹介) マレーシアでローンチされたSUVの雑誌広告案で使われたコピーです。SUVというのは、日常の通勤で使えるし、非日常の遊びでも乗れる。街から山へ、晴れでも雨でも、どこでも行ける。かなりシームレスに使えるクルマなんじゃないかなということで企画をしました。タグラインで、”Live Seamless”=「シームレスに生きろ」というメッセージを提案。コンセプト自体がシームレスなので、ビジュアル的にもシームレスにするためコピーの単語と単語の間を無くして1単語に繋げました、大変読みづらいのですが、読めたらわかって面白いかも…、ということでやってみました。
これ、(「LifeWear.」のテロップ紹介) どのブランドのタグラインかわかりますか? ユニクロです。社長さんは、いつも『究極の普段着を作る』とおっしゃっているようです。普段着を分解すると、生活と服、LifeとWearですね。ほら、よく見ると2単語がくっついていて1単語になっています。どうですか、生活と服をシームレスに繋げたいという意思を感じ取れませんか?
最後にもう1本見ていただきます。(映像で紹介)これは、「負けるもんか」というHondaの人格広告シリーズの一本です。今となっては、こちらの表現の方が「ミニ四駆」より良かったなと思っています(笑)。「負けるもんか」という言葉は、創業者の宗一郎さんが赤いスポーツカーを作ろうとした際、赤は緊急車輌=救急車や消防車の専用色であって、一般車は使用不可!というお達しに対して、『そんなバカな…、負けるもんか!』とつい出た言葉らしいのです。今は、反体制とか反社会というモチベーションは少なくなっているとしたら、「自分自身に負けたくない」を主旨にできないか?ということで、その線でコピーを書いてもらいました。メッセージをストレートに届けるためビジュアルは極力シンプルに、ワンカットで。ここでもシームレスにやってみようと。グラフィックのコピーを少し紹介します。(画像で紹介)「頑張っていれば報われる。持ち続ければ夢は叶う。そんなのは幻想で、努力は報われないし、正義は勝てないし、夢はかなわない…」もうボロボロですね。クライアントにも怒られました。よく見ていただくと、”The Power of Dreams”=「夢の力」というタグラインが付いています。夢の力を信じているのに、叶わないとは言い過ぎじゃないかと。でも、これは「ホンネ」なんです。世の中って、そんなに思い通りにはいかないし、夢もすぐには叶わない。この想いは、会社でも個人でも同じなのではないか。1つの会社が「負けるもんか」というチャレンジ精神、反骨心を表明した。勇気を持って言ってみたら、意外にもたくさんの共感があった。WEB上では100万ビューを超えました。長尺なのでテレビでは数えるほどしかオンエアされていませんが、最初にサッカーの日本代表戦で流したところ、あっという間に拡散しました。もしかすると、「勇気あるホンネ」が、ポジティブな方に作用したのかな、そんな実感があります。そして、メディアを問わずに共有できるコンテンツの1例になれたかも…と喜んでおります。

皆さんもぜひ、身近なシームレスを探してみてください。人でも、モノでも、現象でもいいと思います。

参考までに、シームレスじゃなかった例をお話します。ある家電メーカーの方が話されていたのですが、新開発された薄型テレビの音が良くないので、これを改良するために他事業部、AV部門のスピーカー技術を導入したいと思って問い合わせたところ、会社が違うのでダメだと断られた。会社が大きくなってしまうと、シームレスにくっつかなくなってしまう。残念ながら、テレビのシェアは、外国勢に押されているのが現状ですね。
他にもこんな例があります。この前、リニューアルされた新宿・伊勢丹に行きました。担当されたデザイナーの方は、「大人が迷子にならないこと」をコンセプトにされたそうです。それを実際に体験したかったからです。改装前は、どの階も迷路のようで大人でもすぐ居場所がわからなくなるようなフロア設計。そこで、エスカレーターを中心に広場を作って、どこにいても広場に戻ってくれば、必ずエスカレーターがあって、すぐ上にも下にも行けるようにした。確かにそうでした。つまり、行動がシームレスになったのです。迷うということは、分断されて繋がりが無くなっている状態で、行動が途切れてしまう。やはりシームレスにいつでも行きたいところに行けるということ自体が、非常に魅力的な空間づくりではないでしょうか。

こうしたシームレスを探すという行為が、魅力的なクリエイティブの手がかりになるのではないかなと考えています。ここでは敢えて「新しい」ではなく、「魅力的な」と言います。「新しい」というのは、普段何気なく使いますが、太陽の下にはほとんど無いものだと私は思っているからです。さまざまな先人たちがやってきたことを、自分を通したら違ったカタチとなってアウトプットされる。それは、新しいものでなくても、十分に新鮮でとても魅力的なもの。おそらくこの行為が、先人と自分をシームレスにくっつける作業そのものじゃないかなと思います。そうすることによって、人びとをひきつける魅力的なコンセプト、魅力的なプロダクト、魅力的なアクションが生まれるような気がしています。というわけで、「シームレス探しの旅」をおすすめして終わりにしたいと思います。

最後にお願いがあります。本日のタイトルですが…、「MASS VS SNS」ではなくて、「MASSVSSNS」と、シームレスに繋いでおいてください。

長い時間、ご清聴ありがとうございました。

2013年9月17日

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